Aries.

Home > いただきもの&ささげもの > この美しき世界に――。

2011.11.15 Tue この美しき世界に――。

ものすごくハイスペックな海さまが! 卯月のお話の子を、描いてくださったわけです! 『Una canción de amor.』の王ふたり、サルバドールとメルツォナ・フェレモーア!



 20111110154321b0f.jpg

原寸大! いやっふー!!ヾ(´∀`*)ノアリガトーvvvvv

雑貨屋さん等で見かける、あの、かわいいマスキングテープを使用されたイラストです。かわいい、ていうか、センスハンパない! そして花からふよふよってただようテープがハート柄だって気付いたときの、あの、感動といったらもうただごとじゃなかった! だってあのお話はラスト書きたくて書いたようなものだし! ぅわああああ嬉しすぎる(*ノωノ)///

というわけで、せっかく素敵絵を書いていただいたので、ただ飾らせていただくのじゃもったいないよなあ……と、思い。サルバドールとメルツォナ以下略のお話をね、書いてしまったわけです。卯月さん。



―――でもこれ完全に蛇足だよね! 作者自ら雰囲気ぶち壊しだよね!!←



と、思わなくもないのだけれど、せっかく書けたので追記に載せてみます。あのお話はあれで完結するからいいの!と言ってくださる方は、スルー推奨です。

読まなくても全然支障ない小話、なのに文量は通常の短編と同程度むしろ多いほう、っていう。どどーん!







 『El mundo bonito.』



 神殿の外には自由がある。それはきっと素晴らしいものだ。
 思っていたとおり、神殿の外は素晴らしく広々として、息のしやすいところだった。手足はかるく、気持ちものびやかで。そこに恋い焦がれた自由があった。まちがいなく。
 途方に暮れるほどの自由が。
 生まれてこのかた、神殿で育ち、外に出たことなど一度もない自分にとって、この世界はあまりに広過ぎる。
「――たべないか?」
 だんだんと色を濃くする宵闇のなか、遠慮ない口調で訊ねられ、少女はじろりと視線だけ上向けた。
 拾い集めた灌木の枝を薪にして燃える火の向こうには、少女の見慣れない相手。
 少年だった。歳は少女とおなじか、すこし上か。
 痩せ柄で、ぼろを着て、生傷から古傷まで目に見えてあちこち傷だらけでも当人はいたって気にならないのか、手当てをしようだとか、隠そうだとか、そんな素振りはかけらも見せず、この荒野のただなかで手頃な大きさの岩に腰かけている。
 伸びるままにしているだけだろうに、癖もなくすんなり流れ、立てばくるぶしまで届きそうなほど長い髪は、ぞっとするような忌み色だ。
 あたりは日も暮れてものが見えにくくなりつつあるのに、いまだ地平に近い半分ほどはうつくしい薔薇色のまま、赤く染まった雲がたなびく空など背に負っているものだから、なおのこと気味が悪い。
 だから、少女が無言のまま出方をうかがい、じっと見つめていると、少年は目を反らすでもなくまばたいて首をかしげた。
「いらない、なら、すてる」
 そう言われた少女の手には、しなびた林檎がひとつきり。
 朝から姿のなかった少年が日暮れ前にふらりと戻ってきた時、少女に投げよこした林檎だった。少年は特別なにを言うでもなく、岩に腰かけるとすぐにうとうとと眠りはじめ、少女はしかたなく薪を集めてその場に火を熾したのだ。
 そうして、今に至る。
 少年が眠っていたのは日が落ちきるまでのほんのわずかな時間で、そのあいだ、少女は両手のなかのひとつきりの林檎を見ていた。だから訊ねられたのだ。
 食べないのか、と。
「……食べるよ」
 指摘されたことにむっとしながら少女が言うと、少年はすこし目を細め、すぐに視線をどこかへやってぼんやりと遠くを眺めはじめた。
 少女は林檎を持ったまま、その顔をじっと見る。
 痩せて、汚れて、日に焼けて、傷だらけで、お世辞にもきれいとは言い難い。けれど、いまは自分もあまり大差ない姿だと思われた。神殿を抜け出してから長くはないが、すでに短くもない。あっというまに行き倒れ、運よくこの少年に拾われてからは、荒野を放浪する日々だ。
 髪も肌も荒れ、衣服はみすぼらしく、身体は痩せた。
 神殿の外には自由があったけれど、かわりに、神殿のなかにあったものはなにひとつ存在しないのだと、今はもう理解している。
 食べるもの、着るもの、寝るところ――あらゆるものに事欠いて。
 だから、上天と下界は争うのだ、と。
 ようやく、理解した。
「たべないか?」
 気付けば、少年の目がふたたび自分のほうを向いていた。おなじ問いをくりかえされ、少女は眉間をしわよせる。恥ずかしいような、そんな気がして苛立った。
「あなたは、食べないの? ほしいなら、あげる!」
「ほしい?」
 少年は目をしばたかせて首をかしげる。
 少女がやけっぱちに差し出した林檎と、少女を見比べて、もう一度。
「ほしい?」
「そんなこともわからないの……?」
 少女はあきれたように言う。少年は首をかしげるばかりだった。本当に意味がわからないらしい。少女は突き出した林檎をひっこめ、嘆息した。
 自分を助けた少年が、見た目の年頃にそぐわず言葉を知らないのは心得ているつもりだった。はじめは会話にならなかったのだ。それが、あっというまに話せるようになってしまって、だからやはり、忘れがちになっているのだろう。ふとした時にこうして気勢をそがれてしまう。
 むきになって苛立っている自分がまぬけに思え、少女は両手で林檎をころがしながら考える。
「ほしい、って言うのは……あれがほしい、とか、これがほしい、とか……なにかと言うと、つまり……」
 うまい説明が出てこない。
 少女がうつむいて考え込んでいると、その様子を見つめる少年が言った。
「それは、たべない」
「林檎?」
「りんご、は、たべない。――ほしくない」
 二、三度、かるく首を振った少年に、少女は目をみはる。
 少年はつねにこうして、上天の荒野に水が滲みるように、するすると言葉を覚えていくのだ。いっしょにいた時間は短くないが、長くもない。その時間のなかでこうして会話すること自体、極端に少なかった。それでも。
 話し相手さえいれば、いままでにもこうして、少年は言葉を覚えられたはずだ。
 けれど出会った時、少年は簡単な会話さえまともにできなかった。だから、つまり、そういうことだ。
 目を惹くのはぞっとするような、忌み色の髪――。
 奇異な姿にふさわしく、少年が強大な力をもっていることを少女は知っている。ほんのわずかな水、食料をめぐって血眼で争う人々を、たったひとりで薙ぎ払うところを見た。少年がふらりといなくなるのは、そうして諍いあう者同士を、敵も味方もなく、ただ打ちのめすためだけに戦いの場へと赴くからで、どうしてそんなことをしているのか少女にはわからない。おそらく、少年にも。
 わかるのは、少年がおそろしいほどの力を持っているということ。それだけだ。
 どれほど傷つき、飲まず食わずでも死ねないほどの。
 下界であれば神殿に集められ、隔離され、大切に育まれ、しつけられ――いずれ、王の選定を受け得るほどの。
 それほどの力を持ちながら、きっと、孤独であるという言葉さえ知らないのだという、その事実だけだった。
「……ほしくなくても、あげるよ」
 そう言って、少女はしなびた林檎を両手でつかみ、ぐぅっと力を込め、しばらくかかってどうにか割った。かるく息を切らしながら、片方を火の向こうに投げ渡す。
 少年は、飛んでくるからとりあえず受けとめたという風情で、不格好に割れた林檎を片手で掴み、すぐさま少女のほうに差し出した。
「たべない」
「ほしくなってから、食べるといいよ」
「ほしくない」
「いつか食べるの。ほしくなったら」
 少女は林檎にかじりつき、ほおばりながらもごもごしゃべる。神殿にいた頃には考えもつかなかった、品のない食べ方だけれど。少年はやはり気にしている風もない。
 手のなかの林檎を、裏返したりしてしげしげと眺めまわし、それから。
 少女を見て。
 自分を指差し、少年は言った。
「サルバドール」
 少女はしばらく考え、意味を悟って唖然とする。
 まさか、と思うけれど、しかし少年ははっきり己が身を指差していて、そうして言うのだから、きっとそれは、少年の名前なのだ。
 少女はしばらく言葉が出ず、驚きのあまり目をしばたかせるばかりだった。
 それでも少年は聡く少女に通じていることを察して、もう一度自分を指差してみせる。
「サルバドール」
 自分の胸を叩いたその指先を、少女に向けて。
 少年は言う。

「――ほしい」

 その声がやたらに大きく聞こえ、上天の荒野の隅々にまで響いた気がして、少女は飛び上がりそうになりながら、けれど腰を浮かせることもできず、とっさに。
「メル、っ」
 自分の声こそ大きく響いた。こだまに驚き、息を呑む。
 それから、どうにか、呼吸を整えてもう一度。
「メルツォナ・フェレモーア……」
「――メル」
 言いなおした部分をサルバドールにそっくり返され、メルツォナ・フェレモーアは自分の顔がかっと熱くなるのを感じて居たたまれなくなった。
 そんなふうに、だれかに、親しげに呼ばれたのは初めてで。慣れない。
 ましてや――。
「メル」
 そう呼んで、めずらしく、本当にめずらしく、サルバドールが笑うから、メルツォナ・フェレモーアはそれをまともに見られず、おおげさに顔をそむけた。
 とにかく心もとなく、手にした林檎の残りを握りしめていると、サルバドールが言う。
「たべないか?」
「食べるよ!」
 怒鳴るなり林檎の残りをまるごと口に押し込んだ。味がしないのはしなびているせいだ。きっとそうだと思いながら、メルツォナ・フェレモーアは意地になって咀嚼する。
 ちらりと横目にうかがえば、サルバドールはうっすらと笑みを残したまま、視線を落として林檎の半分を眺めていた。
 それから何気なくひと口、林檎を齧る。
 その瞬間、口のなかにほんのりと林檎の味が広がった気がして、メルツォナ・フェレモーアはいよいよサルバドールに目も合わせられず、言い知れない心地のまま、空の端にのこる薔薇色を遠く見つめた。
 下界の神殿にあったものは、何ひとつないけれど。



 恋い焦がれていたものは、たしかに、きっと――ここにあるのだ。











なんでこのシリーズはタイトルがスペイン語かっていうと、それはまあ……なんとなく。←

『Una canción de amor.』よりも過去時間軸。よそよそしいふたりが仲良くリンゴを食べるまでのお話。ちなみに、卯月はリンゴのおいしさというやつもよくわかりません。口がかゆくなるんだよう(´・ω・`);;



つぎのお休みにはページを作って、本館に載せようっと。背景はなににしようかな~♪


関連記事
スポンサーサイト



Comments

name
comment
ミズマ。 : URL

2011.11.16 Wed 07:50

リンゴは禁断の果実です……!←


幼い二人が可愛すぎて辛いです。
この後を思うとなおさら……ッ!

たぬ : URL

2011.11.16 Wed 11:03

忌み色ってどんな色なんだろぅ(*´∀`)ノ~ ??

: URL

2011.11.16 Wed 18:44

再来ー!!
とっても大好きなお二方の再登場にときめきが抑えられません。
ぎこちないやりとりが可愛くて可愛くて、
「——ほしい」
のところにぶわっときました。サルバドールさんがまさかこんなに可愛い人だったとは!
薔薇色の空のように穏やかで優しい時間に、本編を思うとせつなくなりますねぇ……。神話の世界のように殺伐と美しいのに。
再びお二人とお会いできて嬉しかったです! ではでは、失礼しました;;

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2011.11.16 Wed 22:29

ミズマ。さま
>リンゴは禁断の果実です……!←
そ、う、い、え、ばっ!щ(゚ロ゚щ) そう考えると、いっきにお話に意味深さが……!←
このあと色々あって、最終的にあの場所にたどり着くわけで……ふたりの過去は段階的に存在してたりするのですが、おそらくこの記事本文の時間軸が、もっとも単純に幸福であったと思われます。


たぬさま
それはね、『忌み色』だよ゚+.゚(*´∀`)b゚+.゚←
サルバドールの髪が何色かとか、メルツォナ以下略の二つ名の『真白き』って何が白いんだとかは、遊びの部分だから、忌み色はたぬさまが「こんなかなー?」と思う色で良いのよbbb 参考までだと、どうも白色が最有力っぽい。次点は紫~♪


祭 歌さま
本編の神話っぽさに対して完全に蛇足で申し訳なく……! 海さまの絵の、あの、無邪気っぽいサルバドールと拗ねてる感じのメルツォナ以下略に「キタ―――――ッ!」とたぎって自制できませんでした(笑)
でも、歌さまにも楽しんでいただけて何よりです! ふたりの時間のなかで、まじりけなく、いちばんしあわせだった頃のお話でした。サルバドールはこのあと急速におしゃべりできる子になって最終的にあの状態になります。メルツォナ以下略女王陛下は、こどもの頃は反抗期で男の子みたいな口調でした、というお話。

かぶとも : URL おはよ

2011.11.17 Thu 07:58

「忌み色」白?プラチナブロンドとか・・・
黒だと普通だもんね・・・
りんごアレルギーでござりますか!
じゃ、さくらんぼも駄目でござりますか!

空野海 : URL

Edit  2011.11.18 Fri 17:00

ふおおお…! まさか原寸で飾っていただけるとは! ありがとうございますー!//
いやはや、こちらこそ描かせていただいてありがとうございました^^*
大!好!き!なんですこのふたり(*ノノ)

しかも短編がもうものすっごくツボで!vv 時間軸が前、素敵ですよねvv
このお話を読んだあとに本編を読むと切なくてでもあたたかくなって、やっぱりここは生まれ変わってぜひ幸せにry
サルバドールさんのかわいさにきゅんとしました! こんな男性素敵! 惚れそう!//

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2011.11.20 Sun 23:14

かぶともさま
さくらんぼもダメです! 生の果物は全般的にダメです(´ДÅ)
ちいさな頃は平気で食べていたのですが、ある時を境になにを食べても口がかゆくなって気持ち悪くなって……やっぱりアレルギー反応ですよねえ(泣)
忌み色、プラチナブロンド! 銀髪っぽいあれですね、好きですーっ!(≧▽≦)


空野海さま
サムネ表示だと画質が劣化しちゃったので「こんなのはちがぁあああう!」と思って、美しいままの原寸大で飾らせていただきましたーっ(*>ω<*) ラブコールもありがとうございます!
海さまのイラストの、サルバドールが可愛すぎてカッとなって書いちゃったのですが(笑) こちらも気に入っていただけて何よりです。ホッとひと安心。書かないつもりだった本編の裏設定、というか、過去設定の場面を書く機会をいただけて、とても楽しかったです~♪
>生まれ変わってぜひ幸せに
――はっΣ(゚ロ゚ ) なるほど! そういうのもアリだなあ……(そして妄想がはじまる……

comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback