Aries.

Home > 小話 > 闇の眷族、みたいな、はじめての家出編その6。

2012.05.11 Fri 闇の眷族、みたいな、はじめての家出編その6。

残り4回……たぶん、決着がつく、はずよ? な、6回目!(笑)










 どんどんどんどんっ、と表口のドアにこぶしを叩きつける音がした。
 せんせぇーっ、せんせぇーっ! 外から響いて聞こえる声に、言いかけた言葉をさえぎられる。若い男のひとの声だ。おどろいて視線をおよがせると、カネダ先生はもともと眠そうな目をさらに半分にしていて、ヴァシリーサさんがすこしの沈黙のあとに言う。
「……センセ。あいつ、ぶっとばしちゃっていい?」
「行ってき、て、言うたりたいけどなあ……騒がしやっちゃ」
 先生は閉じたカルテを棚に戻し、室内履きのサンダルのかかとをペタペタ鳴らして受付窓口に歩み寄った。大きな病院の受付はカウンターになっているけど、この診療所では壁に嵌めこまれたガラス窓がそれだ。診療時間外でも開けっ放しなのはここもいっしょ。
 その窓から待合室側に顔を出し、カネダ先生が声を張る。
「開いてるでーっ、大声出しなァっ、はよ這入りーっ」
「すんませんッしたーっ! っじゃましァす!」
 表のドアの開く音、遠慮ない動きで下足を履きかえる音、そういえばあの舌を巻くようなしゃべり方には聞き覚えがあるような、待合室につづく引き戸が軋みを立てて開く。
「っちわス、せんせー」
 窓口の向こうに見えたのは、ジュースのようなオレンジ色の頭。
 前髪が立っているから眉毛のないのがよくわかる。腕まくりしたワイシャツにゆるく結んでたるんだネクタイ。履いているのは今日もぶかぶかのジーンズだと思う。
 慌てた様子でやって来たその人は、やはり見知った相手だった。
「ヒロ! うるさいよう! だから空気が読めないんだよ!」
 ばかばかばか、と、ヴァシリーサさん。あんたホンマにアホの子やなあ、と、カネダ先生までも言う。
 ヒロさんは天羅のお父さんのところで働いているひとだ。あの人の幼馴染の部下、ということで、何回か会ったことがある。ヴァシリーサさんとカネダ先生の挨拶もそこそこの罵倒に、ヒロさんは首をかしげつつ。
「いやあのよくわかンねっすけど、マジヤバいんで、それどころじゃねっつーか……アキさんは? こちらにいるすか? キリヤマさんチすか?」
「にゃんこはうちにおるよ」
 カネダ先生が窓口のまえから身体をどけるようにすると、すぐにヒロさんと目があった。
「アキさん!」
 目を大きく見開いて、嬉しそうに、というよりも、なんだか達成感に満ちた様子で名前を呼んでくれるヒロさん。こんにちは、と軽く頭を下げて返せば、っちわす! と窓口から一瞬姿が見えなくなるほど深々とおじぎを返してくれる。
「にゃんこに何の用や? どないした」
 カネダ先生の問いかけに、ヒロさんは「はい!」と勢いよく答えて。
「いまこっちマジヤバくて、アキさんが来るのを待ってようと思ったンすけど、そんなこと言ってらンねえヤバさで。ハンパねェすよとにかくちょーヤバくて! だから早くアキさんに来てほしいンすよ、マジ、ヤバいンで!」
「……だれか、これの言うヤバいの意味わかるやつ、いてるか?」
「ヒロはばかだから上手におしゃべりできないんだよ」
「っせ、バカ女だまってろ!」
 だれがばかよ!? と、喰ってかかるヴァシリーサさんをカネダ先生が宥め、長く息を吐きながら眉間を揉んでうなだれる。先生、頭でも痛いのかしら? と、思っていると、その視線がこちらに向いた。
「にゃんこ」
「はい?」
「どないな事かようわからんのやけど、とりあえず、このオレンジ坊主といっしょに行ったってくれんか? これに使い走りさせよるくらいや、危ないこととはちゃうやろし。うちもじきに診察はじめるよって、こないやかましのが一人増えるとかなわんのや」
「わかりました。大丈夫です」
「悪いなあ」
「あざァす! アキさん! 先生!」
「それよりセンセ? 一人増えるって、どういうこと? 増えるって」
「さあ?」
 あー仕事や仕事や、と肩を回し首振って骨をごりごり鳴らしながら診察室のほうへ行こうとするカネダ先生を、ヴァシリーサさんが杖を持って追いかける。先生がいつも履き物のかかとを引きずるように鳴らして歩くのは、もしかするとヴァシリーサさんが追いかけやすいようにじゃないだろうか、と、そんなふうに思いながらこちらも膝に置いていたバッグを肩から斜めに提げて席を立った。
 受付の部屋から待合室へ出て行こうとしたとき、診察室のほうから、先生の白衣の裾をつかまえたヴァシリーサさんがひょこっと顔を覗かせてくる。
「アキ! ヒロの用事が終わったら、戻って来てもいいんだよう。男はバカだから、たまにはお仕置きが必要だよ?」
「なにそそのかしよるんや、アホ。変なこと吹き込みな」
 ヴァシリーサさんのやわらかくて長い髪を乱すように、軽く頭をこづきながら、カネダ先生もこちらを向いて、「ほなな」と、半分の目をさらに細くして笑った。
 ふたりにお暇をしてから待合室に出ると、ヒロさんはやっぱり、ワイシャツにだぼだぼのジーンズを履いていて、わたしを見るとまた腰からお辞儀をしてくれる。
「お手数おかけします! あざァっす!」
「いえ、それより……」
 さあ行きましょう、外に車が――と、言いかけるヒロさんを制して、問いかけた。
 ヒロさんがこんなに慌てているからきっとまちがいないと思う。
「まじやばい、のは、ゴウダさんですか?」












というわけで、前回「つぎゴウダきます!」と言っておきながらコレです☆(爆)

たしかにあの時点ではゴウダ登場まで書こうと思っていたのだけれど、するとどうもキリが悪いというかなんというかだったので、ね!? とりあえず名前はでてきましたからごめんして……orz



そういえば、カネダ先生はおやっさんよりも年上で江戸時代のひとです。200歳。

当時風なら蘭方医ってことになるのだろうか。最初は漢方の東洋医学者だったけど、そのうち西洋医学にも興味をもって転身、そんなときに天羅の血族に出会って吸血鬼に興味――いまに至る。みたいな。

先生を眷属にするの、オッケーだよって言ったのは、するとおやっさんのお父さんなのか。先代天羅。



ヒロくんは、まえにミズマ。お姉さまに闇の~でお話を書いていただいた時に登場した新キャラで。こっちでも出してみたけど、卯月、あいかわらずトレース力低くて口調迷子泣ける☆

とりあえず、不良っぽい、舎弟っぽい感じをがんばってみたけれど、大丈夫かなあ……ドキドキ。





つぎこそは、うちの可愛い担当の出番にちがいない! 満を持して!


関連記事
スポンサーサイト



Comments

name
comment
ミズマ。 : URL

2012.05.13 Sun 15:12

ヒロくーーーーーーーーーーーーーーーーーーんキャー ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃 キャー
きっと出てくるって私信じてたけど、本当に出して下さってありがとうございます!! マジでヤバいですwwwww
ヒロくんはチンピラで舎弟でヤンキーでオッケーです。
重心は低く、猫背でポケットに手ぇ突っ込んで、前方を下から睨むようにして歩くのがデフォです。天啓的ヤンキーでございますね!

次回ゴウダくん登場、楽しみです!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.05.13 Sun 21:43

お姉さま
ヒロくん登場させてしまいましたー!
>重心は低く、猫背でポケットに手ぇ突っ込んで、前方を下から睨むようにして歩くのがデフォ
ヤンキーwww テンプレのようなヤンキーwwwww 学生時代には単ランとか着ていたのでしょうかwwwww
チンピラ口調とチャラ男口調の境界がよくわからなくて???と、なりながら書いたのですけどオッケーでたので今のままの方向性で突っ走ってみます!(笑)
そしてゴウダ回は書いてて楽しいというかしあわせな気持ちになってます、さすが可愛い担当w

comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback