Aries.

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2012.09.15 Sat 闇の眷族、みたいな――こわいから手を繋ぎましょう。

歌さまのお題サイト50題に挑戦、前回、あれだけ1ページに収めると豪語した直後1ページ超えとか!(泣)

で、でも3ページにはならなかった、から……!(マテ、











「――せんせぇー、おれ、おかあさんいませーん」
 黒板のまえで青くなる教師の顔も、いまさらすぎる教室のざわめきも、べつにたいしたことじゃあなかった。教室のはしとはしにいるのに、それでも困っているのがわかるゴウダのあわてふためく気配のほうが、断然にうっとうしいかったから。
 もうすぐ母の日ですね、みんなでおかあさんの絵を描きましょう――なんて、すごくめんどうだったし。
 だからあの日はてきとうにやりすごしたけど、今日、日曜日が終わって、明日から学校がはじまれば、また図工の時間がやってくる。先週の続き。おかあさんの絵。
 ゴウダはそのうち、あいつの本当のおかあさんを描きはじめてた。先生はせいいっぱい気をつかって、おかあさんじゃなくてもいいの、好きなひとでいいのよ、なんて言っていたけど。おれには、おかあさんも、おとうさんも、好きなひともいない。
 同族のきらわれ者、やっかい者、本当なら生まれてすぐ「なかったこと」になるはずの生太刀には、父親も母親も、だれもかれも、いなくてあたりまえだ。生まれなかったはずの子どもに、親も兄弟もともだちも、いるはずがないんだから。
 だから、そんなのはほしくないし、ほしくないからさびしくもない。
 おれはカンペキだ。
 ないものをほしがって泣くようなゴウダとはちがう。なにもまちがえてないし、おかしくもない。困ることはなにもない。だけど――。
「めんどうだなあ、学校……」
 図工なんかなくなればいいのに。
 西日が射しはじめた子ども部屋でからだを起こしてぼんやりしていると、気づかないうちにひとり言がもれた。すぐにちかくでひとの身じろぐ気配がする。もう昼寝がいるような歳でもないのに、時間になればあいかわらずおれたちを寝かしつけようとして、自分がまっさきに寝こける世話係が、おれの声を聞きつけたようだった。
 床にひろげた昼寝マットに丸まったゴウダのとなりで、いまどき時代おくれなメイド服を着た世話係のリリコが、まぶたを眠そうにして起きあがろうとする。
「イクヤぼっちゃま、起きてらして……?」
「ううん。リリちゃん寝てろよ、もうちょっと」
 持ちあがりかけたからだをそっと押しかえすと、リリコはかんたんにまくらに頭をおとしてまぶたを閉じた。のんきそうな顔。マットのうえに投げだされた手を、なんとなくとってみると、すこしカサカサしているほそい指が、やわらかく握りかえしてきた。
 リリコはのん気だし、とろくさいし、ひとことを信じやすい。
 だからめんどう事を押しつけられてもわかっちゃいない。おれのことも、ゴウダのことも、ふつうの子どもみたいに思ってる。見てくれはそうだとしても、おれは生太刀だし、ゴウダは万禍識だ。同族のきらわれ者、やっかい者、本当なら「生まれなかった」はずのおれたち。そのうちリリコも気づくだろうか?
 めんどうな子どもを押しつけられた、と。
「……」
 仕事をするリリコの手はすこしかわいて荒れているけど、ほんのりあたたかくて、触っていると気持ちがよかった。リリコはここのメイドで、おれたちの世話係で、のん気でとろくて、どちらかといえばいっしょにいて心配になるヘンなおねえさんで、だから、まちがってもおれのおかあさんじゃあないけど。
 リリコのこの手は、きらいじゃない。
「……、めんどうだなあ」
 おかあさんの絵、白紙のままでいいやって、思ってたのになあ。










天羅の家に引き取られた順番は、イクヤさんが先、ゴウダが後でした。ゴウダは6、7歳前後まで、実の母親といっしょに暮らしていたけど、イクヤさんは物心つく前におやっさんに拾われてて、リリコさんはその頃からのお世話係だった。という感じ。ゴウダが来るまで、イクヤさんにとって完全に「おれのリリちゃん」だった。

ちなみに、天羅の家のメイド服は古式ゆかしい露出度少ないメイド服です。頭部にはフリフリのヘッドドレスじゃなくて、あの、なんだろう、給食当番がかぶる帽子?みたいな? とか、もしくは三角巾状のものをつけていたりするといいなあ、と、思うのですが、あまりにも古めかしすぎるので「もう文明開化も教科書に載っている出来事になって久しいのですから、そろそろメイドたちの制服もデザインを変更すべきかと。御館様」「そうだねー」みたいなやりとりがあって、ちょっとは現代風になっているかもしれません。とはいえ、通常の小話時間軸だと、リリコさんはもうおばあちゃんな年齢になりつつあるのでメイド服着てませんけども。

子どもゴウダがリリコさんになついていたことを、イクヤさんは折に触れからかってそうだけど、子どもイクヤさんもわりとたいして違いなかったんじゃないかなあ、と、思ったり。だからふたりともいまだにリリちゃんには頭が上がらない、と。



ネタに詰んだよ! と、我が君にご相談いたしたところ、子どもゴウダと子どもイクヤさんのお話は~、というアドバイスをいただいて。今度はメールで話してたようなちびっこふたりとリリちゃんのかわいい話とか、おやっさんがアレな展開とか書きたいなあ! SS消化でなくとも通常小話でもいい。

あとリリコさんとキリヤマさんのラブい話も書きたい、けど、とりあえずまずはお題消化。がんばろー。




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Comments

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我が君 : URL 衝撃!!

2012.09.15 Sat 22:08

ゴウダ 台詞なし!!wwww
こんなに良い話なのに、そこにウケたww
チビッ子バージョン書いてくれてありがとう☆

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.09.15 Sat 23:19

我が君
ゴウダ寝てたwww ぐっすり寝てたよこの子、だから大きくなっちゃったんだよ!(笑)
ちびゴウダとちびイクヤさんがかわいい話も書きたいし、おやっさんのアレ(笑)も書きたいし、あの時のメールはちゃんと保護してあるんだぜbbb

ミズマ。 : URL

2012.09.22 Sat 01:45

このイクヤさんモロ好みドストレートでどうしようかとのたうちまわるしかない私は実際問題顔面崩壊でミスタイプしまくりなほど動揺しているのですけれどどうもありがとうございました!!!←

うわー、やべぇ。超かわいいんですけど! これが将来ヒモになるとか、考えたくないんですけど!!(違います)

チビっ子時代のお話、ウマウマでございました!


そしてゴウダくんはセリフなしという安定のフェアリーっぷりw

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.09.23 Sun 00:34

お姉さま
小学生のイクヤさんがお姉さまを挙動不審にしている、そうか、うちの正ヒーローその1がヒモ属性(違、)じゃなかったのは小学生までかwwwww 正ヒーローその2は過去から現在まで安定のフェアリーだし(笑)
このちょっと大人ぶった多感な小学生が、その後、俺☆無双の厨二期から人生初にして最大最悪の挫折を味わい、失意の数年間でヒモ属性スキルをぞんぶんに培って、現在、鉄壁のヘタレに至るわけですドーン☆
ちびっこ時代話は、我が君によいネタをいただいているので、またそのうち書こうと思っておりまするーヾ(´∀`*)ノ 次回はちゃんとゴウダにもセリフをw

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