Aries.

Home > 小話 > 闇の眷族、みたいな、おとしまえ編。 その4

2012.10.16 Tue 闇の眷族、みたいな、おとしまえ編。 その4

ちなみに、ストックはここまでです!(キリッ










 ものすごい音と震動だった。突然に。
 ユリちゃんは何が起きたのかわからないようだけれど、わたしはこういう物騒な音には慣れているから、状況はわからなくてもとっさに動ける。学校で評判の洋菓子屋さんの場所を教えてくれていたユリちゃんを、なかば押し倒すみたいにして覆いかぶさると、こんな状態でもアムリタの甘い匂いが鼻についてどきりとした。
 けれど酔っている場合じゃない。しっかりしなくちゃ。
 爆発するような音は壁が砕けて崩れる音。揺れたのもそのせい。うちではままある事だけれど、ふつうのお宅では滅多にありえないと思っていた。こんなふうに。
 ――悪いひとが来るなんて。
「てめェら、よりにもよって……俺のキッチンに何しやがる!」
 カイさんの怒声で騒ぎがいっそう激しくなった。
 聞きなれない人の声や、室内が荒らされる物音にまじって痛いような音が断続的に聞こえて身がすくむ。時々、銃声のようなものまで聞こえるからなお怖い。いったい何人いるんだろう。考えかけたところで、呆然としていたユリちゃんがはっと我に返った。
 タイミング悪くだれかの悲鳴が響き、ユリちゃんの顔から血の気がひく。
「な、なにっ? 襲われてる、え、えっ、なんでっ!?」
「大丈夫です。大丈夫ですから」
 あわててみじろくユリちゃんは、わたしがのしかかってるのも怖いようで、だから早くどいてあげたいけれど、腕がからまって思うように動けない。状況もたしかめなくちゃならないのに。襲ってきているひとが、何人いて、同族なのかそうじゃないのか。
 イクヤさんもカイさんもいるから、大丈夫だと思うけれど。
 ユリちゃんは、ふつうの、人間の女の子だもの。
 わたしは半分だけど血混じりだから、ユリちゃんより丈夫だし、力も強い。
 しっかりしなくちゃ。
 ひとりじゃない。大丈夫。こわくない。大丈夫。
 ユリちゃんの肘のあたりにからまっていた腕を抜いて、どうにか起きあがりかけた時に、不意にうしろから脇のしたに腕を入れられて息が詰まるかと思った。そのままぐいっと身体をひっぱって立たされる。その頃にはもう、相手がだれかわかっていた。
「――イクヤさん」
「アキちゃんいい子ね。俺の出番なくなっちゃった」
 軽く笑ったイクヤさんはあの紫色の眼鏡をはずしている。
 やわらかく微笑んでいる青い目は、なんでも切り裂く邪視の眼だ。イクヤさんが異能を使うことはほとんどないけど、いざという時のための用心だろう。邪視の異能は視界をさえぎられるだけ威力が落ちるという。
「ユリちゃんは、大丈夫? 立てるかな? ムリなら抱っこしてあげる」
 キッチンの喧騒なんか聞こえていないふうに、普段通りの調子でイクヤさんが差し出した手にすがりながら、ユリちゃんもソファを降りて立ち上がった。カイさんのことが気にかかるのか、ユリちゃんは何度かキッチンのほうを見ようとして、けれどあまりの騒ぎに頬をこわばらせ、イクヤさんの陰に隠れる仕草をする。
「びっくりしちゃったね。カイさんは強いから大丈夫よ。すぐに終わるし、俺たちはすみで待ってようか? アキちゃん、おいで」
「はい」
 もう一度座り込んでしまいそうなユリちゃんの背を押して、壁際に移動するイクヤさんのあとに続く。
「――あ、の。あの、」
 歩きながらユリちゃんが言った。
「わたしの、せい、かな? カイは。カイ、」
「カイさんならだいじょーぶ。あのひと本当にハンパなく強いのよ。俺がいるからには空気読めないあいつらの狙いがユリちゃんだとも言えないし。カッコいいイクヤお兄さんはお仲間にチョー嫌われてンの。みんな俺がイケメンすぎてつらいみたい!」
「イクヤさん非常時です真面目にしてください」
「はい」
 シュンとおどけて肩をすくめるイクヤさん。
 壁を背にするようにユリちゃんを立たせてから、振り向いて、こっちに手を伸ばして。
「アキちゃんも――」
 言いさした言葉を飲みこみ、青い目が鋭くわたしの肩越しに向こうを見た。
 その視線につられて背後を見ようとした瞬間に、腕をつかまれて引っ張られる。そのまま壁際に押しやられた。たたらを踏んで倒れそうになったところでユリちゃんに支えられ、リビングに窓ガラスの割れる派手な音が響く。
「――ッ!」
 とっさに声を上げたのは、わたしか、ユリちゃんか、ふたりともか。
 知らずに閉じていた目を開いた時には、窓を突き破り、ソファを飛び越えて襲ってきた相手の腕と襟首を掴まえたイクヤさんが、うまく身体を捌きながら鐘つきみたいに相手の頭を壁に叩きつけて昏倒させるところだった。壁伝いの震動に人ひとり分の重さを感じて背筋が粟立つ。キッチンのほうから大きなものが飛んできて、リビングのローテーブルに落ちたのもほぼ同時。
 すさまじい音を立てて天板をひしゃげさせたのもまた襲ってきた悪いひとだ。黒っぽい服装の知らない男のひとは、壊れたテーブルのうえであおむけになってぴくぴく痙攣していた。
「――うちのに怪我ァねえだろうな?」
 いつのまにか静まりかえっているキッチンから、そう言ってダイニングに出てきたのはカイさんだった。
 がっくりと首をのけぞらせ、気を失っている相手を途中までひきずっていたけれど、ふっと、どうして掴まえたままなのか疑問に思ったようで、首をかしげながらキッチンカウンターのほうへ放り出して手ぶらで歩いてくる。イクヤさんの言った通り、カイさんはケガひとつなく、変わったことといえば服がすこし汚れたくらい。
「ふたりとも無事。カイさんったら過保護ねえ。歳とって丸くなったの? こんな連中に手こずっちゃって」
「よろぼいでンのはてめェだろうが。加減が難しンだよ。人間の相手は」
 大体そいつが怪我したらいろいろ面倒臭いだろうが、とイクヤさんのまえに来てカイさんは眉間をしわ寄せながら言う。その目がちらりと、ユリちゃんを見た。
 視線にはユリちゃんも気づいたようで。
「め、面倒くさいって、なに!? 面倒くさいって」
「おーおー。元気そうで何よりだ」
 カイさんはそっけないけど、ユリちゃんはほっとしたみたい。さっき転びそうになった時に支えてもらったまま、寄り添うようにしているから、強張っていたユリちゃんの体から力が抜けていくのがわかる。
 よかった。
 わたしはもう慣れっこだけれど、ユリちゃんにはあまり、こんなふうにびっくりするような、こわい思いをしてほしくない。
「つか、ここ警備ついてるんじゃなかった? おやっさんの持ち家でしょ」
「こっちまで手が回らなかったンだろ。住んでンのは俺らだけじゃねェからな。俺がいると思って、うちは大体あとまわしだ」
「お姫様の番犬も大変ねえ。ちなみに、人間にうらまれる心当たりは? スーパーで野菜買い占めたとか」
「俺がそのへんの店で産地も生産環境も収穫日も流通経路もはっきりしない大雑把な保存方法で雑に管理された食材を適当に調達してると本気で思ってンなら今すぐ教えてやッから表出ろクソガキ」
「もう内(なか)も表も関係なくない? ご自慢のキッチンもめちゃくちゃじゃん」
「言うな! 考えないようにしてンだよッ!」
 怒鳴るカイさんと、面白がっているイクヤさん。
 それを見てユリちゃんも吹き出すように小さく笑った。もう大丈夫みたい。よかった。
 本当に――。
「――油断されすぎるというのも、なかなかどうして、困るものだ」
 耳元で聞こえた。
 知らないひとの声だった。
 そうだと気づいた時にはもう、横合いから伸びてきた腕に、首を締め上げられている。










これだけ大胆に騒いだらご近所大騒ぎじゃないかとか警察とか来るんじゃないか、と、思ったけどたぶんそのへんはまあどうにかなっているのだろうね!(おい、)

本当は、カイさんを形態変化でわんこ狼に変身させたかったけど、室内で暴れるなら狼になったほうが動きにくそうだし不便だなあ、と、思って断念。天羅、地祇の異能は変身能力です。もとが同じ血族なので異能も同一。気化したり液化したり硬化したり、べつの生き物になったりできます。だいたい100%純血じゃないと異能は使えないけど、ゴウダは眷属混じりでも気化だけなら出来るひと、霧状になれます。おやっさんとかカヤ兄とか総領クラスならひととおり全部できそう。おやっさんはいっぱいのコウモリになって分裂するのが好きだし、カヤ兄はカイさんと同じで狼になる人。きっと森に棲んでそうな黒っぽい狼。

ユリちゃんは、基本ふつうの中学女子なので、危ない目にあったらうろたえてもしかたないっていうかむしろかわいくて守ってあげたいなあ、と。アキちゃんは、慣れもあるけど、だれかといると「しっかりしなくちゃ」と思うほうだから、冷静さをたもってるというより、気が張ってるだけ、みたいな。自分だけになるとちょっと弱そうな気がする。



――というわけで、続きはまだ書いてない!(どーん)


関連記事
スポンサーサイト



Comments

name
comment
我が君 : URL ギャー!!

2012.10.16 Tue 22:46

気になるよ!!続きが気になるよぉ((((;゜Д゜)))
朔ちゃん家のフェアリーゴウダは何処に行った!!
駆けつけてこい!!wwwおやっさん守ってないでアキちゃん守れよ!!(失言ww)

ミズマ。 : URL

2012.10.16 Tue 23:08

キッチーン!!!∑(゚□゚;)ガーン(。□。;)ガーン(;゚□゚)ガーン!!
カイさんのキッチンが! キッチンがあああああああああ!!!!(*゚ノO゚)<オオオオォォォォォォォーーーーーイ!

うわー、カイさんのご心痛が忍ばれますねぇ。たぶんキッチンを八割方壊したのはカイさんなんでしょうけれど、何日かはへこんで暮らしていそうですw
これだけ壊れたんだから、ワンちゃん狼になっても良い気もするんですけどね、着替えもすぐ調達できるしw

と、まあ、ここまではどうでも良いです。良くはないけど、言ってしまえばどうでも良いです。

朔ちゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああん!!! 続きはあああああああああああああああああああッ!!!?(*゚ノO゚)<オオオオォォォォォォォーーーーーイ!
こんな極悪なところで「次回に続く。だが書いていない!(キリッ」じゃないよおおおおお!!!オーイッ!!L(゚□゚o)オーー(゚|□|゚)ーーイ!!(o゚□゚)」オーイッ!!

ユリちゃんは、もういっぱいいっぱいだと思うの。早く安全な環境に置いてあげて下さいませ(/_;)
今夜もユリちゃんはカイさんと二人でホラーDVD鑑賞だと思われます。リビング壊れてますけどw

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.10.17 Wed 22:32

我が君
今日、コメントくれてるの見てキャッキャしてたところにメールが来たから卯月かなり嬉しかったのよ!(*≧∪≦) というわけでゴウダについてはそんな感じの予定になっておりますですw 我が君の言葉におやっさん涙目で「私つよいからひとりで平気だもんだいじょうぶだもん……」って部屋の隅で膝を抱えてキリヤマさんに「いい大人が『もん』はおやめください、『もん』は」ってツッコまれてるきっとw


お姉さま
「キッチーン!」を「カッキーン!」に空目して、一瞬「え、打った? 飛んだ?」と思ったのは内緒です(*'v`)b←
敵もなぜあえてそこから突入してきたのかと! もっと広い場所から来ればよかったのにと! むしろあらゆる意味で火に油をそそいでどうするのかと! 思わなくもなかったのですけどなぜかキッチンから突入してくる敵さんでした。なんという命知らずのアウトローたち……!(戦慄)
そしてカイさんがわんこ狼にならなかった理由のひとつに「変身後……マッパじゃん。ユリちゃんのヒーロー、マッパじゃん……っ!」と、思ってそのたくましい肉体美をおおいに披露してもらってもまったくかまわないなって胸板とか腹筋が脳裏をよぎったりもしたのですがさすがにこれ以上卯月の脳内でカイさんをはずかしめるのもどうかと思い着替えをとりに行く隙がなさそうだったので、今回は変身せずにいてもらいました。でもあきらめません! わんちゃん狼さんをもふもふしたい戦わせたい! 交錯する本音と建て前!щ(゚ロ゚щ)クワッ
ユリちゃんにはもうちょっとだけドキドキしてもらわねば、ならぬ、かも? しれません。なんにせよ「次回に続く。だが書いていない!(キリッ」のでもしかしたら唐突にコメディパート始まる可能性も残っておりますが(笑)
つ、吊り橋効果でカイさんとユリちゃんの仲を急速に深めようなんて、思ってないんだからね!←
でも本当にカイユりの距離感はお姉さまのお話くらいがちょうど良いニヨニヨだと思います。お姉さまはニヨニヨ職人だという卯月の認識。

comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback