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2012.10.18 Thu 闇の眷族、みたいな、おとしまえ編。 その5

なんだか10回じゃ収まらない気がしてきたゾ☆←









「アキ――!」
 アムリタの子どもが悲鳴じみた声で叫ぶ。その声に心臓がつぶれそうになる。
 伸ばした手は届かなかった。
 小柄、長い髪、吊り目の男――先刻割れたベランダの窓からおそろしく気配を消して入り込んでいたらしいその男は、アムリタの子どもからうちの子を引き剥がすと同族でしかなしえない身ごなしでこちらと距離をとった。男の服をかすめた手が空を掴むのを待たずあとを追いかける。後ろでカイさんがアムリタの子どもを引き寄せようとする。
 そのどちらにも邪魔がはいった。
 カイさんに投げ飛ばされてひっくり返っていた男と、俺が壁に叩きつけた相手。
 完全に気を失っていたはずのふたりが、突然電気でも流されたように目を見開いて飛び掛かってくる。とても正気とは思えない。
 がむしゃらに組みかかってくる力もまともじゃない。
 自分の膂力に耐え切れず、骨を軋ませ、ぶちぶちと筋の切れるいやな音をさせながら、俺にはわざわざ頭を下げさせ視界をさえぎるように掴みかかってくるのだからご丁寧なことだ。めちゃくちゃな勢いで背中を壁に押しつけられたカイさんのいらついた顔が視界の端に映り込む。振り払えないのではなく。加減のない相手に、けれどこちらも力任せにやってしまえば 人間の身体なんかはひとたまりもないから困っている。
 これが同族相手なら、なんの遠慮もしないのだが――。
 向こうもそれはわかっていて、だから自分は離れた。うっとうしい人間の相手をしながらめまぐるしく動かさざるをえない視界のなかに男の姿を探せば、割れた窓際から捕まえたうちの子を盾にしてこちらの様子を眺めている。一瞬だけ見たその目は赤い。
 ――同族の目だ。
 異能使いの純々血、おそらくそれで間違いない。
 意識のない相手を操る邪視は鬼神(グイシェン)の血族の異能だったか。強力になれば死体さえ動かすとうそぶく力なら、気絶した人間くらいは簡単に扱える。こんなでたらめもたしかに可能だ。
 可能だが、ありえない。
 しつこく起きあがる相手をもう一度落とす間に、そこまで考えた。
 その先はアムリタの子どもの悲鳴に押しやられる。
 俺たちがそれぞれの相手に手こずっている隙に、キッチンカウンターのそばに頽れていたはずのもう一人がダイニングを突っ切ってリビングに飛び込み、立ち尽くすアムリタの子どもを攫う。目の前の相手を蹴り飛ばして沈めたカイさんの顔色が変わった。
「――ユリっ!」
「動くな」
 アムリタの子どもを抱え、一足飛びに窓際へ移動する相手を追おうとしたカイさんに、窓際に立つ純血の男が言い放つ。
 男、のように見えるが、ともすると女なのかもしれない。
 どちらともいえない妙な声音だ。
「まあ、わざわざお願いしなくてもこれでは動けないだろうが。おかしなことはしないほうがいいぞ? 子どもをいたぶる趣味もないのに、愉快でないことは、俺だってあまりしたくない」
「てめぇ……!」
 唸るようにカイさんが歯噛みする。
 相手はうちの子を盾にしながら、アムリタの子どもを抱える人間の男も自分のまえに立たせ、こちらの視界から念入りに姿を隠していた。俺の異能を警戒している。
 やはり相手も邪視の異能使いだ。だからこそ弱点も把握済み。
 見えないものには効かないし、視覚の認識が甘ければ、その分だけ威力も落ちる。
 壁を破って襲ってきた人間たちはほかにもいるのに、向こうが三人しか操らなかったのもそのためだ。リビングから見える位置にはそれだけしかいなかった。あとはキッチンの奥で伸びているか、カウンターの陰から手足が少し見えているだけで、異能が効かなかったのだろう。
 鬼神の異能使い、純々血の同族。
 血統主義の鬼神ではそれなりの大物であってもおかしくない相手が、白昼堂々よその血族の、それも総領の庇護下を襲撃するなど、ひと昔前なら即、血族同士の争いにもなりかねない。始祖の筆頭ともいえる総領サンジェルマンが人間との共栄を掲げる穏健派寄りの今、さすがの血統主義連中も表立った波風は避けたいはずで、そこに火種を持ち込む血族の暴挙を総領が看過するとは思えない。
 だから、この状況は「可能だがありえない」。
 ただ――。
「はぐれ者が、何の用だ」
 返答によっては覚悟できてンだろうな?
 凄んでみせるカイさんが、ちらりとこちらに視線をくれる。その目の虹彩は元のアイスブルーから赤く変わっていた。
 向こうも異能使いならこちらも同じ。
 弱っている俺とちがってカイさんは万全だし、下手な動きはできなくても、上手くやればアムリタの子どもを奪い返すことができる。その時に、一瞬でも相手の姿が見えれば俺の異能も役に立つ。
 見えないものには効かないが、見えるものならなんでも切り裂く邪視の眼だ。
 カイさんとちがって、一回しか使えそうにないのが痛いところだけど――その一回で俺が使いものにならなくなって、たとえうちの子を取り戻せなかったとしても、この状況さえ崩すことができれば、あとはカイさんがどうにかしてくれるだろう。俺のことは適当にほうっておくとしても、まさかうちの子を見捨てたりしないはずだ。
 ――こんな時には万全じゃない身体がうらめしいな、いつも。
 かといって、治す気もないから救いがない。段取りはわかっているとうなずくかわりに口端を上げてみせれば、カイさんはすぐに視線を戻した。
 血の気の引いたアムリタの子どもと、彼女を掴まえた人間の男、うちの子の向こう側に姿を隠した相手が、笑うような気配がする。
「ばれてしまったか。――まあ、この状況ではそう思うのが妥当だな」
 はぐれ者。
 意味は言葉そのまま、血族からはぐれるとそう呼ばれる。
 はぐれる理由はさまざまだが、はぐれ者は総領の監督外にあってその庇護を受けない、という点で共通した。血族からはぐれ者が出ると、総領は身元を明らかにして他総領に知らせる取り決めになっているからだ。はぐれ者について、総領はその行動に一切責任を負わず、はぐれ者の処遇についても関与しない、という意味を含めて。
 だからこそ好き勝手にふるまえるのが、はぐれ者だ。
 ただしケツは自分持ち。
 何をするにも自由だが、しかし、何が起きても庇護はない。保険がない。逃げ帰るべき場所もない。
「はぐれ者の望みなど、たかが知れているだろう?」
 自嘲しているのか、俺たちを小馬鹿にしているのか、向こうは目的をあっさり口にした。
「――俺はな、総領の庇護が欲しいんだ」










イクヤさん視点とアキちゃん視点で地の文を交互にしてると、なんかこう、画面の黒さの度合いがわかりやすくてちょっと楽しいんだけれど、たぬさまー! もしもまた読んでくれてたらごめんねー! なるべく改行しようと思ってるけどこれでもいっぱいいっぱいなのー! 読みにくかったらごめんねえーっ!m(。≧Д≦。)mスマーン!!

アキちゃんパートはわりと、白っぽいので読みやすい、と、思いたい。

そして女の子ふたりをまるっと敵の手に渡してしまったヒーローたちどうする。お前らこれからどうする気なんだ、もっとガッツリ守れよ! なんだそのていたらくは卯月のせいだなそうだったごめんな女の子たち! 卯月のテンションがちょっとおかしいのはいまお腹がすいているからです。でも間食できない23時。

ちなみに、現時点の強さ比は、カイさん=はぐれ者>>>イクヤさん、みたいな感じ。うちの無敵最強はチートのくせに最弱っていうか虚弱な状態が現在標準。

はぐれ者について、あの設定にあてはめると、カイさんも実ははぐれ者ということになるのだけれど、いまはおやっさん預かりで天羅の客分みたいな立ち位置だから、はぐれてるけどはぐれてない、みたいな感じ? になるかな? とか??? アキちゃんは地祇に存在自体認められてなくてそれ以前の問題。ヴァシリーサさんはウピル総領がはぐれ者認定してなくて、いまも変わらずウピル総領庇護の血族っていう扱いだから、帰ろうと思えば手続き上はとくに何もしなくても帰れたりする。子どもを産める純々血の女はどこもなかなか手放さないよね。

とか、つらつらと考えていたら、あれ、もしかして、もしも本当にカイさん地祇の純々血設定でおkなら、カイさんとアキちゃんって、父方のほうでわりと近い親戚じゃね? そのうえ、カヤ兄ともすごく近い親戚じゃね? ぉおおお……! とか思って妙なktkr感に襲われたりとか。登場人物の血縁とか関係とかをまとめるのが結構好きです。楽しい。



続き? まだ書いてない。(ニコッ


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Comments

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ミズマ。 : URL

2012.10.19 Fri 00:47

朔ちゃん続きいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいいい(*゚ノO゚)<オオオオォォォォォォォーーーーーイ!
女の子二人が不憫だから!! 早く、助けてあげて!! そしてカイさんのわんこが見たいよう!!!←


カイさんとカヤ兄とアキちゃん、「実は親戚とかなんじゃ?」と思っていた時期が私にもありましたw
純々血って、血族の中でも数少ないだろうし、ただでさえ吸血鬼は数がいないんだしねぇ。じゃあカイさんのコックコートはカヤ兄お手製だったりするのか……!?←
カイさんは天羅の客分でしょうね。たぶん昔に血統主義である地祇の名を貶めるようなことをして放逐されたのかしら?←疑問系じゃなくて、ちゃんと考えようね、私。

>「――ユリっ!」
カイさんが名前で呼んだああああああああああああああああああああああああああヘ( ̄▽ ̄*)ノ・ ・.♪ヒャッホーイ♪.・ ・ヾ(* ̄▽ ̄)ノ
いやぁ、今回のキモはここでしょうね、私的には!!
やっぱ焦ったときに名前で呼ぶってのは、良いですねぇ。ドキドキします。ドキドキ。

敵の狙いがユリちゃんでもアキちゃんでもなくって、ちょとホッとしました。イクヤさんはあれだ、倒れてるヤツの血でも吸って、万全にしてから出てこい。←

続き、全力待機!!! ゴウダくんの出番も待機w

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.10.19 Fri 22:03

お姉さま
度重なる脳内妄想検証の結果、卯月気づいたのです! カイさんが「ユリ!」って叫ぶ時の口の動きがものすごく好みなのだと!щ(゚ロ゚щ)クワッ
イクヤさんはなにかなあ、ちょっと泣いちゃいそうな感じに弱く笑う顔が好きだなあ……正ヒーローに対する萌えポイントがそこでいいのかなあ……?(遠い目)
というわけで、おとしまえ編でやりたかったこと「カイさんにユリって呼ばせる」やらかしましたー! お姉さまもドキドキしてくださって、よかったヾ(´∀`*)ノ そうなのです、よく考えるとカヤ兄とアキちゃんとも親戚になるかもしれないカイさんです。父方の血縁だった場合。いとことかふたいとことか、叔父と甥姪とか、そんな感じで。ってことは、サーシャお兄ちゃんも親戚になるかもしれません。つながる親族の輪!(笑)
天羅は先代から「困ってるなら俺んチ来いよ!」な家風なので、はぐれ者も結構な数保護してるけど、カイさんはなかでも大物の部類だと思われます。子持ちの女総領はいまのとこ地祇だけだから純血男の需要も高い! そのうちどこかの女総領とのお見合いのお声がかかったりしてその流れでユリちゃんといろいろあればいいなあ! とか、妄想をたくましくする卯月。カイユリ好きすぎて最近はカイユリ妄想ばかりしております。あとカネダ先生とヴァシリーサさん。イクヤさんとゴウダとアキちゃんはほっといてもそれなりに楽しく暮らしてるから(おい、)
続きはガチでまだ一文字も書いてません!(キリッ そしてゴウダへの期待感がみんなすごいなあ、と、漆黒のフェアリーのこの安心感に対してヘタレのマジヘタレッぷりwww

ポール・ブリッツ : URL

Edit  2012.10.21 Sun 09:50

三日間、アパートと実家で寝たら頭がすっきりしたので書き込みに来ました。

それにしても、まだ悪寒があるなあ。フリース着てPCの前に座っています。日差しがあって暖かいうちが勝負や。

お身体にはお気をつけを……。

レルバル : URL

2012.10.21 Sun 13:34

つづきまだですか(真顔で。

真城 青瑛 : URL

2012.10.21 Sun 18:52

俺は静かに待ちますよ

我らが漆黒のフェアリーことゴウダの出番を(ぇ

そして、天羅の屋敷に新たなお子さんが増えることを(違


戦闘でのイクヤさんとカイさんのカッコよさプライスレス(真剣
戦闘シーンいいですよね
肉弾戦だけでも盛り上がるのですが、異能を使った戦闘とかもうカーニバルですね(意味不明(´д`;

可愛いお姫様たちが傷つけられないように頑張れヒーロー!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.10.21 Sun 21:47

ポール・ブリッツさま
ポールさまこそ、ご自愛ください! 風邪はなおりかけが肝要ですから、寝てください! 日差しのポカポカ感に油断しちゃだめですよう!(*´>д<)っ【生姜湯】


ルル
ダラダラついったに入り浸っていたけど、ルルに叱咤されたから、続き、書いたよ! お姉ちゃんがんばった!( ´ ▽ ` )ノ


真城 青瑛さま
漆黒のフェアリーが出待ちされているwww ありがとうございますwww
そして子どもが増えるってあああそういうことか! そういうことか! と、気づいた瞬間ちょっと赤面しそうだった卯月///← フェアリーがんばって! きっとおやっさんすごく喜ぶそれ!(笑)
でもまあしかしまだイクヤさんEDの可能性もありますからね! まだ、かろうじて、残ってます!(ェ、 今回は彼もがんばっていますので! 戦闘シーン大好きでバトル書きたいバトル書きたい言ってた欲求をついに解消できて卯月もカーニバルです(笑)
可愛いお姫様はしかし次回でついにしびれを切らしてげふげふw

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