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2012.10.25 Thu 闇の眷族、みたいな――紅茶もジャムも、いらないの。

歌さまのお題サイト50題に挑戦、ちょっとご無沙汰してました。三か月どころか半年かかっても終わりそうにない遅筆だけど、あきらめてないんだからねッ!









「セーンーセっ?」
「なんや、どないした?」
「手、くっつけて」
「こないか?」
「うん。きゅってして」
「きゅ?」
「握って、きゅって」
「なんやの」
「いーいーかーら!」
「やかましなあ……これでどないや、ええか? なんの遊びやの」
「――センセ、もうすぐクリスマスだよ!」
「ひとの話聞けちゅうに」
「あのね、センセ、あのね――」
 クリスマスに指輪がほしい!
 テーブルを挟んで手のひらを合わせ、互いの指のあいだに自分の指を通して両手をそれぞれ握ったまま、リサはいかにも無邪気にそう言った。
 指輪。
 どの指に欲しいのか、訊ねるまでもないと思うのは不遜にすぎるだろうか。
「だからねセンセ、ちゃんと覚えてね? アタシの指のサイズ」
「アホか」
「サイズがわからなくて困るのはセンセなんだよ? プレゼントはこっそり用意して、喜ばせてくれなくちゃダメだよ!」
「おねだりされてこっそりもクソもあるかい。アカン。指輪はアカン」
 不満そうな声をあげるリサの手から自分の手を引っこ抜くと、最初こそ威勢よく文句を言っていたのが、だんだん勢いをなくして、そのうちしゅんと肩が落ち、しおらしくなった。だめなものはだめだ。
 服やら靴やら、生活に必要なものを買い与えるのはともかく、指輪なんかは――。
「じゃ、じゃあね……センセ」
 すっかりしぼんだ声で、リサが言い募る。
 どうやって叱ればあきらめるのか、考えてもきりがない。「アカン」の一点張りでいこう。そう思った。
 けれど。
「指輪、アタシのはなくていいよ……でも、センセは、して?」
「……なんでや?」
 思わず訊きかえすと、リサはいよいよ恥ずかしそうに、うつむきがちになって。
「だって、センセがとられちゃったら、ヤだよう」
「……なんでや?」
「だって、だって、もしもアタシのいないところでだれかがセンセを好きになったら、たいへんだよっ!? センセはちびだし意地悪だけどうっかり優しいから!」
「言うてることがようわからんのやけどあんたわしの悪口言いたいんか?」
「ちがうよ! アタシはセンセが大好きなのにっ、センセはみんなに優しいからっ、ちゃんとアタシのってしるしをつけておかないとっ、心配なんだよっ」
「いつのまにあんたのになってんや、わし……」
 うなだれていたのも一瞬で、言いながら頭のなかの妄想に癇癪を起すリサにため息が出る。誰も彼もに優しくしているつもりはないし、意地悪(いけず)で偏屈(ヘンコ)のちっちゃい年寄りが、そうそう女に好かれるとも思わないが。
「センセは指輪して? ね? ね? そうしてくれたら、アタシ、このさきずーっと、クリスマスプレゼントいらないよ? おねがいだよう」
 そう言っても、どうせ、ほとぼりが冷めた頃にはまた、プレゼントをねだってくるはずだ。子どもといっしょだ。一生のお願いは何回でも有効。
 ため息が出る。
 そんなに必死になって捕まえておくほど、わしはええ男か?



紅茶もジャムも、いらないの




「わかった、わかった。やかましから、リサ、静かにして――ちょっと、手、くっつけてみ」










毎日寝る前にクリスマスまでの日数を数えてワクワクするヴァシリーサさんと、どないしょうかって思うカネダ先生。プレゼントはまだ未定、のつもり。これでも。いちおう。

ひとつお布団で寝るから、冬はぬくぬくのふたり。


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ミズマ。 : URL

2012.10.28 Sun 00:13

うわなんですかかわいいんですけどリサさんキャー ヾ(≧∇≦*)〃ヾ(*≧∇≦)〃 キャー
なんだかんだ言いつつ、結局指輪を買ったカネダセンセは、指には付けないけど首から下げてくれるぐらいはしてくれそう……! もしくは、リサさんがいないところで指輪つけてくける、とか。
いやいや、カネダセンセは大人ですから、ちゃんといつもずっとつけてくれるかも知れませんね、なんだかんだ言いつつ。そもそもリサさん見えないんだし、んで、指輪つけてるのが普通になって頃にリサさんがカネダセンセの手に触れて指輪してるのに気付いたらいいって思う♪ヽ( ´ ∇ ` )ノ

ここは当然ペアリングでよろしくお願い致します!!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.10.28 Sun 22:57

お姉さま
卯月もカネダ先生にはぜひペアリングでお願いしたいです!
「あんたら、ひとの気ぃも知らんと。無責任に」
お願いしたいです!!
「……まあ、考えとくよって(嘆息)」
でも、いざ先生がペアリングを買ってきたら、ネックレスにして首にさげるのはわりとヴァシリーサさんのほうかも、と思ったりして。で、先生ちょっと不機嫌になる。
「なんで指にせえへんの? あんたが言うから買うてきてんで」
「だってね」
「なんや」
「指から落っこちちゃったら、アタシ、ちゃんと探せないからこわいんだよう」
「……あんたなあ、ホンマに」
この流れで先生がため息吐くときは、きっと、かわええなあと思っているはずです(笑)
サイズ合うてるからそない細いモンにぶら下げてるよりマシや、とか言って、ヴァシリーサさんの指に嵌めてあげるといいです。先生。

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