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2012.11.18 Sun 闇の眷族、みたいな、おとしまえ編。 その12

これがあと1回で終わるかは、賭け。











「――いい雰囲気のトコ、悪ィが。色男」
 わたしのうしろからかかったカイさんの声で、ゴウダさんの手が弾かれたように背中を離れ、気配がビシリと固まった。
 ゴウダさんに抱きついたまま振り向けば、リビングのソファで声もなく笑っているヒフミさんを背景に、カイさんが立っている。その横にはカイさんに唖然としているユリちゃんが。
「飯が出来た、さっさと食うぞ」
「もうっ、もうっ、カイのバカ! お料理バカ!」
 こぶしを握ってポカポカ振り回すユリちゃんに、カイさんはうるさそうに目を眇めながら、ユリちゃんのおでこをぐいーっと押して遠ざけた。
「こっちだって今がイイ塩梅なンだ。各皿の熱の残り具合、野菜の鮮度、スープの具のふやけ方――夜会でつまみ食いされンならともかく、家飯は出来立てが美味いに決まってンだろうが。ガキの乳繰り合うのなンざにこれ以上一刻一秒譲れッか」
「バカーっ!」
 ユリちゃんは怒っているようだけれど、カイさんが声をかけてくれて良かったと思う。
 そうでないと、ゴウダさんから離れるタイミングがなかっただろうから。
「あ、お、俺……荷物を、おいて、来ます……っ」
 ゴウダさんは、すみません、すみません、と言いながら、ぎくしゃくしつつわたしと離れて、鞄をとりあげると躓きながら廊下に出て行った。あんな調子で、転んだりしないかしら? と、思っていたら、ドアの向こうで大きな音。
「微笑ましいねえ」
 そう言って笑うヒフミさんは、ソファをおりるとスリッパのぺたぺた鳴らしてやって来る。手には荷物のはいった肩掛けバッグ。今日はたまたま、カイさんのお家に近い図書館に来ていたというから、バッグの中身は本だろうか。
「それじゃあ、僕もそろそろお暇します」
「――食ってかねェのか?」
 なんだよ、と、驚いたように片眉を上げるカイさん。
 ヒフミさんはちょっと申し訳なさそうにして。
「ゴウダくんが帰ってきたということは、父は確実に居残りでしょう。今日は、イロハもツクモもいませんからね。ハルとナツだけにお母さんを任せておけません」
「ンだよ、作りすぎちまったじゃねェか……待ってろ。詰めッから、持って帰れ」
「お母さんが喜びます」
 カイさんが、手早く、でもお弁当みたいにきれいに詰め込んだ料理を持って、ヒフミさんはそれからすぐに、お家に帰った。もう外は暗いけど、ヒフミさんにとってはまったく問題ないみたい。
 ヒフミさんを玄関まで見送りに出る途中でゴウダさんとも合流して、みんなで夕食の席に着く。
「そンじゃ、手ェ合わせて。――いただきます」
「いただきます」
「いただきます」
「いっただーきまーす!」
「てめェ……」
 フォークとスプーンを高々と掲げたユリちゃんに、げっそりため息を吐くカイさんは本当は和食が好きだというのだけれど、今日はゴウダさんの好みに合わせて洋食中心の献立。天羅のお父さんのお家であるパーティで、テーブルに並んだごちそうみたい。
「アキは、天羅のおじさんのパーティに出たこと、ある?」
「はい」
「いいなあ! 私、一回も連れて行ってもらえないんだ。いいなあっ!」
「メインディッシュが場内うろついたら面倒だろうが。俺が」
「ひどっ!」
「わ、わたしも、そんなに、何回もは。行ったことない、です。イクヤさんが連れて行ってくれる時だけ」
「ほらほら、聞いた? カイ聞いた? イクヤさんは連れて行ってくれるんだって!」
「じゃあてめェもあのジゴロに連れてッてもらやイイだろうが。ついでに××されて、女が油断してッとどォなるか、泣きが入るまで教えてもらえ」
「だから食事中にっ、」
「ユリちゃん、××ってなんですか?」
「伏字禁止ーっ!」
 アキもそんなこと言っちゃダメ、と、ユリちゃんは顔を真っ赤にして、カイさんもすごくへんな表情になった。気になンならそのうち生太刀に教えてもらえ、でも絶対に訊くな、なんて、めちゃくちゃなことを言うから、困ってしまうのだけれど。
「……あの、」
 ひかえめに食卓へかけられたゴウダさんの声に、みんなが振り向いた。
「連れてってくれる!?」
「す、わ、れ」
 勢い込んで立ち上がりかけたユリちゃんをカイさんがたしなめ、ゴウダさんもあわてて首を振る。
 ユリちゃんはむうっと眉根を寄せながらオムライスにスプーンを突き立てて口いっぱいに頬張った。ユリちゃんの料理はアムリタ用の食材で作られているけれど、見た目はふつうの料理と変わらないから、カイさんは本当にすごいのだと思う。
 作り方を教えてもらえたら、わたしもいつかユリちゃんにごちそう出来るかしら、と考えながら、けれど今はゴウダさんの話を聞いてあげなければ。ゴウダさんは、しゃべりはじめにつっかえるとなかなか続けられない人だから、いまもユリちゃんを怒らせてしまったのかと困惑している。
「それで、ゴウダさん」
 どうしました? 訊ねると、ゴウダさんははっとして、うなずいて。
「あの……生太刀は……?」
「カネダのジィさんとこだ」
 聞いてンだろ、と素っ気なくカイさんが返事をする。
 カイさんの言うとおり、連絡を受けて昼間のことについて知っているはずのゴウダさんは「はい」とうなずいたけれど、表情は晴れなかった。目元が暗いのは、いつもだけれど。釈然としていないような、不安そうな、よくあるふうに言うと、心配顔みたい。
 だから――。
「大丈夫です」
 そう言うと、カイさんのほうから、ちらりと、叱るような視線がきたけれど。
 顔を上げたゴウダさんに、もう一度言う。
「イクヤさんは、大丈夫です」
 昼間、ジンホァさんとクルルギさんが帰ったあと、わたしの血を舐めて、イクヤさんはすぐに目を覚ました。
 血といっても、ほんのすこし、口の端が切れてにじんでいた程度だったから、気休めにもならないかもしれないと思っていたのに。意識の戻ったイクヤさんは、ちっとも苦しそうではなくて。いつもより顔色がいいくらいだった。
 同族の習性を知ってはいても、はっきり実感していないと思うユリちゃんはともかく、わたしも、カイさんも、ヒフミさんも、すごく驚いたし、どうしてだかわからなかったけれど、いちばんびっくりしていたのは、きっとイクヤさんだったと思う。
 それでも、すぐにわたしの心配をしてくれて、抱きしめてくれたから、嬉しかった。
 イクヤさんはそのあと、ヒフミさんが手配してくれたとおり眷属のひとに連れられてやってきたカネダ先生といっしょに、先生の病院に移動した。
 念のためや、と、先生は言ったけれど――なにか、理由が、あるのだと思う。
 だって、そのあと、ゴウダさんのお家にみんなで移る前に、カイさんが言った。わたしだけを呼び出して。
(いいか、チビ)
(今日、おまえが生太刀に何やったか)
(だれにも言うな)
(絶対に)
(ユリは適当に誤魔化しとく、ヒフミにも俺が話をつける)
(だから、いいな)
 絶対にしゃべるなよ――どうしてなのか教えてくれなかったけれど、カイさんは真剣な顔で、相応の理由があるのはわかったから、あえて訊いたりしないままうなずいた。
 だから、カイさんがユリちゃんにどう説明をして、ヒフミさんとどんな話をしたのかも知らない。
「つうかよ、」




 





……おかしいな、肉食ワイルド詐欺紳士シスコン系弟属性コック中学生女子と同居中たまにワンちゃんのカイさんなのに、卯月が書くと、ほんのり漂いだすオカン臭……あれ? ご飯作ってくれる人=オカン、の刷り込み発動?(オイ、

キリヤマ家は、男6人に対して女性はリリコさんひとりで、リリコさんは混血でもほとんど人間寄り、吸血したとしてもアキちゃんみたく大の男を蹴り倒す馬力はないので、キリヤマ家男子はみんなお母さんを宝物みたいに大事にしてる。強い順だと、キリヤマさん>イロハお兄ちゃん>ヒフミお兄ちゃん>双子>ツクモお兄ちゃん。双子の力量はともかく思考と精神面が子どもだから不安なヒフミお兄ちゃんは、体格があればイロハお兄ちゃんに負けないはず。

ユリちゃんが「伏字禁止!」と、言ってくれると、すごくホッとする卯月(*´꒳`*) 今回の会話の流れで、後日、ユリちゃんもおやっさんの夜会に出ましたよ、みたいに繋がればいいなあ、とか。

そしていまもってゴールが見えず走り出せそうもない本編のために、がんばって伏線を張っているので、ここで切ります! 次でおとしまえ編完結したい! なるべく!←


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Comments

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我が君 : URL

2012.11.18 Sun 16:29

『つうかよ、』なんだぁぁーー!!
気になるよ朔ちゃーん(;_;)

ミズマ。 : URL

2012.11.19 Mon 23:35

密かに我が家にリンクついてるwwwありがとうございますwww二か所もwwww

そしてカイさんが伏字言うとアキちゃんが復唱してしまってカイさんにもダメージ入るという現象が楽しすぎるw 因果応報が光の速さでやってきたね、カイさんw

この食卓はとても楽しいなぁ。ユリちゃんかわいいユリちゃんかわいい。いただきますはちゃんとしようね! アキちゃんもかわいい。おろおろするゴウダはバリフェアリーだし、オカン属性のカイさんも良い!
>なんだよ、と、驚いたように片眉を上げるカイさん。
何気ない動作が好きです……!←親バカ。


はー、幸せ(〃▽〃) たぶん朔ちゃんが思っている以上に、朔ちゃんの書くカイさんとユリちゃんのことが、私は好きです。だからね、下手なカイユリは書けねェな、って、気が引き締まるのだよね! うん、頑張ろう。でもカイユリのネタ、持ち合わせがないんだよなぁ(^_^;)

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.11.20 Tue 23:01

我が君
キリのいいところがそこにかなかったのだよ☆ あとほらCM前は気になるところで終わらないとチャンネル替えられちゃうし!(笑)
イクヤさんとカイさんの『若紫計画』めっちゃしっくりきたw そういえばアキちゃんに「お部屋」とか「お花」とか、名詞の前に「お」つけるの教え込んだのイクヤさんだから。女の子らしく「お」つけなさいってwww


お姉さま
隙あらばお姉さま宅へのリンクを張り巡らせる卯月(*`・ω・´)キリッ
アキちゃんは知的好奇心がわりと強めなので、気になる言葉は聞き返します。そして、大人が使っている言葉は当然「使ってもいい言葉」だと思うので、ためらいなく口にします。光速の因果応報だねカイさん!www でもアキちゃんがカイさんの伏字ワードを口にしたことでもっともダメージを受けているのは確実にゴウダ(笑)
カイさんも、ユリちゃんも、これでいいかな大丈夫かなあ?と、思いながら書いてたので、お気に召してもらえてうれしい&安心しました(*´∀`*) よかった、及第点だった!(*pωq*)///
カイユリ話――卯月はつねに万全の態勢でアイドリング待機してますが(エコして!)、もちろんお姉さまのもとにネタが降ってきてモチベーションが高まった時に楽しんで書いていただければ何よりですので! ていうかむしろ卯月本編書けよと!(自分で言った)
……決着地点がマジで脳内でマルチエンディングになってるので、もう、あみだくじとかで決めようかなあ←

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  2. まとめ【闇の眷族、みたいな、】

    これがあと1回で終わるかは、賭け。 まっとめBLOG速報 - 2012.11.18 16:17