Aries.

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2012.12.12 Wed 闇の眷族、みたいな――だいすきなもの、落としました。

歌さまのお題サイト50題に挑戦、卯月の消化力は、我ながら、どうしてそうなったと言わざるをえないのである!(*´・Д・)ナゾィ…









 ちびで泣き虫のりっちゃんは、そんなふうだから悪ガキどもがこづくのにちょうどいい相手で、しょっちゅういじめられていた。
 その日は、母親からお手伝いのごほうびにもらったばかりの、当時流行っていたアニメのマスコットがぶらさがるキーホルダーを取り上げられ、悪ガキのあとを追いかけてびーびー泣きながら、必死に両手を伸ばしていたんだっけ。
 ざっと四十年ほどむかしの話。
「イロハちゃああん、イロハちゃあ、ぅあ、うああああああん」
「泣くな、りっちゃん!」
「だ、だって、イロハちゃん、はなから、血が、でてる、うあ、ああああああん」
「このくらいへいきだ、だいじょうぶ! だから泣くな!」
「うああああああああんっ」
 毎度、いつもの調子で割って入り、悪ガキどもを相手に大立ち回りでどいつもこいつも泣きを入れさせたまでは良かったのだが、多勢に無勢でこっちも擦り傷切り傷鼻血が出るわ、暴れているうちにキーホルダーが落ちてなくなるわ、りっちゃんはその後も小一時間泣き続けるわ、結果さんざんだった。
 近くまで来たついでに挨拶でもしようかと寄った天羅本邸で、顔なじみの庭師から受け取った拾い物を眺めつつ思い出していると、テーブル越しに兄貴が笑う。
「たまにはお母さんのいる時に帰っておいで」
「ムチャ言うなっての」
 ちびで泣き虫のおさななじみを、どんな顔して『お母さん』なんて呼べばいいんだ。面白がってンなよ、兄貴め。ちくしょう。
 なにせ四十年も前の、あの日はたしかにピカピカだったキーホルダーのマスコットが雨風にあって原型もわからなくなるほどむかしの話だ。ガキのことだから、好いた惚れたなんて、そんなのじゃなかったが。
 あれからなんとなく、りっちゃんと遊ばなくなったのは、落っことしたキーホルダーを見つけてやれないのがくやしかったんだか、恥ずかしかったんだか。そんな子どもっぽい見栄のために格好をつけていなければ、俺はもうちょっと素直に、おさななじみの結婚を祝ってやれた――かも、しれない。
 なんにせよ過ぎたことだ。



だいすきなもの、落としました




「――なあ、兄貴」
「なんだい?」
「これ、返して、なんだか気づくと思うか?」
「どうだろうね。試してごらん」
「あー……、じゃあ、まあ……今度な」










ちょっと遠ざかっているあいだに好きな友達をとられちゃったような、心境。

おやっさんは子ども好きなので、使用人にちいさな子どもがいたら、昼間は本邸につれてきてもいーよーって言ってて、なので総領のお屋敷なのにわりと託児所みたいになってると楽しいかもしれない。さすがに母屋じゃなくて、離れに集めて、メイドさんが交代で面倒見てるのだろうけど。わけありの子どもを預かる孤児院的な場所はほかにある。イクヤさんとゴウダは身の上が身の上なので本邸で暮らしてたけど。

漠然と考えてある年齢設定を比べたら、リリコさんとイロハお兄ちゃんの歳が近かったので、きっと幼馴染だろうな、と。リリコさんのほうがちょっとだけお姉さん。でも大体、イロハお兄ちゃんのほうが先に立ってリリコさんは後ろをくっついていく感じだった。大将と子分な関係。

キリヤマさんがリリコさんをお嫁さんにすると聞いた時、とっさに思いっきり反対しちゃったので、そのあたりも気まずくて、イロハお兄ちゃんは一人暮らし。月に一回と盆暮れ正月と家族の誕生日には帰ってくるけど、よそよそしさハンパない。でも気にしてるのはじつはイロハお兄ちゃんだけっていうわりと笑っちゃうような状態。ヒフミお兄ちゃんは完全に面白がってる。

リリコさんは、イロハお兄ちゃんのことはいまだに「イロハちゃん」呼び。イロハお兄ちゃんもたまにうっかり「りっちゃん」って呼んじゃって自爆。

ちなみにイロハお兄ちゃんは仕事のアシスタントさんと同棲してるリア充なので、べつに女に弱いとかうぶとかそういうわけじゃないんだけどなー? なんでかなー? って、いう。キリヤマ家の男は総じてリリコさんに弱い仕様。


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ミズマ。 : URL

2012.12.13 Thu 00:06

ヒフミお兄さんもイロハお兄さんも、リリコさんの子供だと思ってた……!!!∑(゚□゚;)←
そ、そーかー、そうでないと、そーだよなぁ、年齢的に難しいよなぁ。うん。


仲の良かった友達がいつの間にかとられてしまったというのは、一抹の寂しさがありますね。
落とした大事なものを拾い上げて大事にしていたら、今はなにか変ったのかな、とか、少しだけ思うと切なくなるけれど、リリコさんがあんな顔で幸せに笑ってるか、ちょっぴり自信がないので、イロハお兄ちゃんは黙ってキーホルダーをポケットにしまったのでした、とか、ね! 良いね!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.12.13 Thu 22:33

お姉さま
ヒフミお兄ちゃん、リリコさんを呼ぶとき『お義母さん』じゃなくて普通に『お母さん』だから、ややこしいですね……すみません(;-ω-)a゙
キリヤマさん、リリコさんとは三回目の結婚で、サヨさんにフラれたあと、最初に結婚したのはヒフミお兄ちゃんのお母さん(先代天羅の伴侶付きの侍女だったノスフェラトゥの血族の純々血女性、だいぶ年上)、つぎがイロハお兄ちゃんのお母さん(ディナシーの血族の眷属まじりの純血女性、ちょっとだけ年下)だったのですけど、二人とも早くに死別したのです。ヒフミお兄ちゃんもイロハお兄ちゃんもお母さん似なので、キリヤマさんチの兄弟はわりと顔の似てない兄弟。
イロハお兄ちゃん、ポッケにしまったキーホルダーをそのまま自分の家の鍵につけたりして、それを同居してるアシスタントさんに見られて「うわなにそれ?キモッ、なにそれキモッwww」とか笑われてやけになって、ちょっと吹っ切れたりしないかなあ、とか、思います。

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