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2012.12.20 Thu 闇の眷族、みたいな――埋没する世界の中で。 その1

歌さまのお題サイト50題に挑戦、そしておもむろに続きものです!(無謀)


最ダメ期のイクヤさんのお話、なので……あまり、明るい雰囲気ではないので、シリアスなのとか暗いのはイヤかも、という方はスルーでも全然オッケーです。そんな感じで、追記からどーん。











 レン、と――だれかを呼ぶ声がする。
 その繰り返しが何度目か、いい加減うるさくなってきた頃、ようやく、自分のことを呼んでいるのだと思い出した。レン。初恋の男の名前だったか、むかし飼ってた犬の名前だったか。身軽そうにふるまって、なんにも気がないふうで、そのくせ執着心の強い女だと、思ったことだけ覚えている。
 振り向くと女がこちらを見ていた。
 裸の身体で寝そべったまま、不安そうに、けれどすこしだけ期待を込めた、そんな目で、俺を見ていた。
 面倒だ、と、思う。
「なに?」
 表面上は愛想よく、にこやかに笑いかけた。
 すると女はあからさまにがっかりしてみせる。何が気に入らない。考えるのも億劫で、意味のない微笑を口元にそのまま貼りつけておく。
「アンタさあ」
「うん?」
「本当はなんていうの」
 ――名前。
 そろそろ訊かれる頃だと思った。案の定。すこしだけ吐息が漏れる。よくある質問についてはこちらをご覧ください、なんて、書いておけばいいのだろうか。どこかに。
「俺の名前はレンだろ? それでイイっつったろ? きみが付けたんだし、俺に」
「さっき返事しなかったじゃん」
「したよ」
「しなかった」
 うっとうしい女。
「ねえ――」
 夜明けまであとどのくらいか考える。いまは何時だ。夜目にも散らかった女の部屋に時計はない。食べ物と汗と化粧品のにおいが混ざった生活臭。外に出たい。苛々する。
 女はまだなにか言いたそうで、けれど、喘がせておけば静かなものだ。
 閉じたカーテンの向こうに雨音が響いている。
 嗤い声みたいに。



(――名前も親も)

(あってもなくても、いなくても)
(いいでしょう?)

(あたしがいれば、いいでしょう?)

(ねえ、イクヤ――)



 外に出るとまだ雨がつづいていた。
 夜明けのなかで笑うだれかの姿なんかはもちろん見当たらない。けだるくて、憂鬱で、ひどく重たるい。なのに欠伸のひとつもでてこなかった。
 女の部屋を後に、つぎはどこに行こうか、ぼんやり考える。
 海の見えないところならどこだってかまわないけど。
 なるべく騒がしくて人が多くて適当な愛想笑いを浮かべていればそれなりに上手くやれる場所がいい。埋もれてしまえるような場所が、きっと楽だ。
 そうやって日々を腐らせていればいつか終われるだろう。
 ここにはサキがいないから。
 なにもかも、もう面倒なだけなのに。
 ――目があった。
 背の高い建物のすきまに忘れられたさびしい路地の隅で、膝を抱えてうずくまっている。子どもだった。値の張りそうな洋服が雨に濡れて貼りつく身体を震わせながら、縮こまって、俺を見ていた。怯えたように。表情のない頬をこわばらせる。
 その目は左右で色違い。
「……」
 細く降る雨は、今日一日、止みそうにもない。
 面倒だ――と、思う。










通常運行の見切り発車、なので、続きはまだ書いてません(酷)


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Comments

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ミズマ。 : URL

2012.12.24 Mon 12:20

「その1」ってなってるのに続きがまだないとか……!

いやあ、このイクヤさん、どつき倒したくなりますねぇ♪ヽ( ´ ∇ ` )ノ
まさしくガンジーが助走つけてとび蹴りするレベルに恥じない! うん、恥じないよ、イクヤさん! 自信持って!←
ここからアキちゃんがイクヤさんをどう落とす(違……くもないのか)のか、気になります!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2012.12.25 Tue 22:58

お姉さま
イクヤさん、このままだとガンジーさんもただ蹴るだけじゃ満足できなくなって、跳び回し蹴りとか、ムーンサルトアタックとか、しょーりゅーけん!とか繰り出しそうですw うん、恥じてない。恥じてないよイクヤさん!wwwww←
こんな正ヒーローで大丈夫か?と、思いつつ、つづきがんばってます! 5回くらいに収め、たい……!(無理)

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