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2013.01.09 Wed 闇の眷族、みたいな――埋没する世界の中で。 その2

歌さまのお題サイト50題に挑戦、初詣編のあとだと際立って重い……消化器系にドゥーン!( ゚д゚)ゲフッ

というわけで、最ダメ期のイクヤさんがアキちゃんとボーイ・ミーツ・ガールする、ようするに「雨の日に道端で猫を拾った」話。なので、暗い話は苦手、とか、もうこれ以上正ヒーローがヘタレなところは見たくない、という方はスルーしても大丈夫な安心構成ですb









   ***



「ねえねえ、サブロー」
「子ども連れ回してるってホントー?」
 俺にサブローなんて付けたのはクラブに出入りしている男どもで、いわく「おまえは顔がイイんだから名前くらいダサくないとダメだ」と。入り浸ってる女たちも面白がって、ここじゃすっかりサブロー呼ばわりだ。なんだっていい。
 いつ襲われても文句の言えそうにない服装で、わざわざ濃く焼いた肌に隈取りみたいな化粧を塗りたくる女たちが不躾に寄ってくると、整髪料なんだか香水なんだか、ムッとする臭いが鼻についた。飲みかけの酒に口をつける気が失せ、グラスをカウンターに戻そうとした手を遠慮なく揺すぶられる。殴り飛ばしてやろうかと思ったが面倒だからやめておいた。酒の跳ねた袖口はシミになるだろう。
 元の顔立ちもわからない女たちは、みんなおなじような面でニヤニヤ笑う。どっかの国の土産に、こういう置き物があった気がする。
「連れ回してるとかやめてくんない? 俺、悪いことしてるみてェじゃん」
「えー、ちがうのー?」
「じゃあさー、やっぱりー、サブローの子どもー?」
「母親に押しつけられて、引き取ったとかー?」
「さァ?」
 曖昧に笑って返す。
 女たちにはそれで充分、楽しいおしゃべりの肴になるようだ。あとは適当に口を挟みながら勝手に盛り上がらせておけばいい。群れてる女は付き合いが楽だ。バカバカしい話を右から左に聞き流しても気づかない。そもそもこちらのことなんか気遣ってもいない。一対一だと、これがなかなかできなくて、とにかく疲れる。
 ――いまは何時だ。
 まだ日付も変わっていないはず、と、思った時には腕時計に目をやっていた。それに女のひとりが気づいたようで、耳障りに高い声で大きく笑った。うるさいんだよ。
「ちょっとー! マジで、子どもいンじゃないのー!? 時間気にするって!」
「違ェよ、ひと待ってンの。待ち合わせ」
「ムキになって、アヤしーぞー?」
「なんなら面倒見に行ってあげよーか? うち弟いたから子ども慣れてるし」
「アンタは弟殴って泣かせてただけでしょーが! あはは!」
「ていうか抜け駆けはナシでしょー? サブローはみんなのサブローなんだから!」
 いつから俺がおまえらのになった、ふざけんな。
「ケンカすんなって。だいじょうぶ大丈夫、俺はみーんな大好き。愛してる愛してる」
「うそっぽーい」
 女たちが甲高く笑う。俺もいっしょに笑っておく。酒はもう飲む気がしない。
 ――早く来い、クソッたれ。
 思えばタイミングよく、女たちの囲みの向こうになじみのドレッドヘアがやってくるのが見えた。長身で体格も悪くはないのに、顔立ちは甘く、分厚い唇にあいかわらずツヤの出る口紅なんか塗っている。そんな顔と体のギャップが不細工にならず、どころかうまい具合に噛み合っていて、ようするに派手な男だ。
「ユージン」
 遅ェぞ、と文句を言えば、振り向く女たちの視線の先で、ユージンは呆れたように肩をすくめた。
「アンタが早いんでしょお? ボクは約束通りに来たじゃない」
「待ち合わせには早めに来ておけよ」
「そーいうことは恋人になってから言ってくれるー?」
 元は太い声音を力いっぱい裏返してしゃべるユージンと軽口をたたき合いながら、カウンターに代金を置いて席を立つ。
 するとすぐさま袖を引かれた。
 女たちのだれか、もしくは全員の手が、服のあちこちを無遠慮に掴まえているのが腹立たしい。おまえらの穴より高いんだ、これは。
「もう行っちゃうのー? もう少しいてよー」
「ごめんごめん、今日はこいつと約束してっからさ。また遊んでやるから」
「えーっ?」
 媚びるようにだだを捏ねてみせる女たちを適当な笑顔でごまかして歩き出す。
 女の手はそれなりにしつこかったが、遊び馴れているだけはあって程よい引き際も心得ていた。気のある振りをしてみただけです、と、言わんばかりの白々しさはお安くて、バカバカしくて、だから俺にはちょうどいい。
 だいじょうぶ大丈夫、俺はみーんな大好き。愛してる。嘘だけど。お互いさま。
 横に並ぶといっしょに出入り口へ向かって踵を返すユージンが嘆息した。
「ホント、アンタよくやるわねえ……どうしてモテるのかしら?」
「知るか。ごっこ遊びの相手にイイんだろ」
「ボクはアンタみたいな男イヤよ。絶対。落ちててもお金もらっても、恋人にしたくないタイプ。しあわせになれる感じが全然しない。顔だけ良くてもダーメ」
「それがこれから報酬もらおうって奴の言うことか?」
「プライベートと仕事は別だわ」
 クラブを出、夜の道をひと気のないほうへと進みながら、ユージンはおどけてウインクしてみせる。男の姿(ナリ)で、女みたいに板についた仕草。横目で見ているとひどく胡乱な心地になって、ため息が漏れた。
 やっぱり、女は群れてるほうが扱いやすい。
 俺はこいつがどうにも苦手だ。










キャッキャした若いオネエチャンの口調にバリエーションがなくて泣きそう(´;ω;`)
そして、もうお気づきのことかと思いますが、卯月、ユージンさん大好きです。曖昧萌え。


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Comments

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ミズマ。 : URL

2013.01.09 Wed 23:32

この感じなら若いオネーチャンの口調は紋切型のが良いんじゃないですかねぇ。どっかの国でお土産で売ってたような、没個性なオネーチャンたちのようですから。
まー、それは置いといても、口調のバリエーションは欲しいですよねぇ。切実。


イクヤさん退廃的ー♪ヽ( ´ ∇ ` )ノ
ってかイクヤさんよりアキちゃんですよ、アキちゃん。アキちゃんをどこに置いて、このバカはクラブなんぞに来てるんだ、と。
イクヤさん、ちょっとそこ正座ね(*^-^)ニコ←

そしてユージンさん。うん、朔ちゃんの愛をひしひしと感じでおりますw
ユージンさん、お名前の語感が好きだわー(〃▽〃)
ユージンさんのイクヤさん評は、まったくもって正しいと思う。このイクヤさんの側にいても、しあわせになれる感じが全然しない!!www いまでさえ微妙なのにw

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.01.10 Thu 22:08

お姉さま
『紋切型』を一瞬『波紋切』と空目して脳裏に必殺技が駆け巡った、疲れ目が相当ヤバイ卯月です(*`・ω・´)キリッ
>イクヤさん、ちょっとそこ正座ね(*^-^)ニコ←
にこやかにほほ笑みかけてからの真顔無表情で平手ですね、わかります。それに対してイクヤさんが何事か発しようものならその瞬間に手の甲で反対の頬を張り倒すのですね、わかります。むしろイクヤさんの顔面が腫れ上がって目が開かなくなるレベルまで往復ビンタを続けるのですね、わかります(*^-^)ニコ←
>いまでさえ微妙なのにw
いまでさえ微妙wwwwwいまでさえwwwww(ツボッた)
最ダメ期のイクヤさんがあまりにもイクヤさんェなので、まあ彼についてはイクヤさんェ状態が通常営業といえばそうなんですけど、とにかく口を開けば殴りてぇと思わせてくれるヒーローなので、精神衛生上の配慮からユージンさんに癒しをもとめております! ユージンさん! 名前の響きがお気に召して嬉しいです、卯月も好きです(*´꒳`*)ムハッ しかしそれはともかくイクヤさんさっさとアキちゃんとこ帰れや、っていう(*^-^)ニコ←

レルバル : URL

2013.01.14 Mon 22:40

おねえくちょうのイケメンとかいいと思いませんか?w

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.01.16 Wed 22:31

ルル
オネエ口調のイケメンとか萌えツボじゃないッスか!щ(゚▽゚щ)
ルルがお姉ちゃんのツボを的確に押さえにきてる……おそろしい子!www

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