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2013.02.12 Tue 闇の眷族、みたいな――とかしたチョコレートに沈めます。

歌さまのお題サイト50題に挑戦、そしてこちらのお話の続きのつもり!※無許可

ちなみに珍しく季節ネタなので、その日まで載せるのは待とうかなー? と思ったのですけれど。よく考えたらいままでイベントネタはすべて外し続けていたので、いまさらか――ってことで、現実世界ではバレンタインまだだけれど、お話のなかではすでに終わってるんだゼ☆











 ユリにもらった義理チョコにあれほど感激していたのだ。
 クルルギはこの国の二月十四日における『まずしい男』に違いない――と、思った。

 ――が。

(同志よ! 今年は大収穫だ! 我が人生はじまって以来の、豊年である!)
(チョコレートはカロリー補給に最適だからな。強壮効果もあるらしい。つまりヒーローにはもってこいの食べ物だ!)
(だから同志、山分けしよう!)
 人生初の豊作が通勤鞄に楽々と入る程度だということよりも、世の中にはこんなうっとうしい大男にもバレンタインデーを遂行してやる女がいるのだという事実のほうが衝撃だった。見れば職場付き合いのためだとひと目でわかる代物だが、何事にも全力で反応するこのバカに、義理だろうとなんだろうと、俺ならばこんなものは絶対に贈りたくない。
 絶対に、だ。
「……」
 大体、覚えある限り「女」として扱われ、ろくな目に遭ったためしがない。
 かといって「男」ならばどうかといえば、「女」よりはまだしもマシ、というだけで比べるほどの差異はなく、そのあたりの事情もなにもほぼ嘘いつわりなく語って聞かせてやったというのに、筋肉がつきすぎてささやかな脳みそに送る栄養もないらしいクルルギは驚愕にあたいする速さで頓着しなくなった。具体的にはひとりで泣いてありったけの発泡酒を俺にふるまいながら先に酔いつぶれたあげく、寝て起きたら十年来の友人のようになっていた。暑苦しいまでに同情し、こちらの狙い通り衣食住すべての生活の面倒をみてやると申し出たことは今も忘れていないようで、だから問題はないのだが。
(同志は)
(チョコをくれないのか?)
 なぜ俺がわざわざ二月十四日にチョコなどくれてやる必要がある、バカめ。クルルギめ。
「……」
 暇を持て余してふらりと立ち寄ったデパートの、いまさら寒々しいだけで片付けるのも億劫そうな置きっぱなしの特設コーナーでは、時期を外した売れ残りがあわれなほど値下がりしていた。ほんの数日前まであれほど賑やかしていた制服姿の小娘どもも、もはやないもののように視線をくれていないのが滑稽だ。
 不味い飯は食いたくない。
 だから料理はしてやる、けれど買い出しはクルルギの担当だ。休日に買い物袋を五つ六つパンパンに膨らませて持ち帰った食材は、去年の暮れに新調した300Lサイズの冷蔵庫にぶち込まれている。玉ねぎもニンジンもジャガイモも、牛肉も。
「……」
 不味い飯は食いたくない。
 どうせ手間をかけるなら、美味い飯を食いたいだけだ。



「同志、ただいま! カレーか!」
「ああ」
「いい匂いだ! 我が家のごはんの匂いがいちばん美味しそうだったぞ、今日は!」
「毎日じゃなくて悪かったな……さっさと着替えろ、もう出来る」
「うむ!」
 もとから狭い玄関上がりの台所兼通路を福々しいたたずまいで存分に圧迫する冷蔵庫のそばを器用に通り抜け、クルルギは子どものように騒がしく着替えを済ませると、ついでに手洗いとうがいも忘れず、テレビをつけてテーブルのいつもの位置に腰を下ろそうとするのかこの木偶の坊。
「水と。コップと。スプーン。――なにでどうやって食うつもりだ?」
「おおっ、ぬかった!」
 気の利かん子どもか、お前は。
 ミネラルウォーターを求めて冷蔵庫を開け、食器を探しながらもたもたと背後をうろつくクルルギに辟易しつつ、適当な皿に白飯とルーを盛りつける。クルルギは大飯喰らいだ。一杯がすでに三人前だがこれをさらにおかわりする。考えただけで押し寄せる胸やけにはもう慣れた。
 あらかじめ用意しておいたサラダも出してテーブルの向かいに座った頃には、クルルギはさっさと手を合わせて食べはじめている。テレビを横目に気にしつつ、俺が食べはじめるとしばらくしてから視線をよこし。
「同志」
「なんだ?」
「美味い」
 言うなりコップの水を一気に飲み、クルルギは破顔した。
「美味い!」
「そうか」
「いつもより美味い気がする!」
「そうか」
 美味い美味いとくりかえしながら、クルルギはスプーンの先を皿の底にガツガツぶつけるほどの勢いでかきこみはじめた。白飯もルーもあっというまに嵩をなくして、大男はいそいそと二杯目をよそいに立ち上がる。
 俺はまだコップの水も半分と飲んでいない。
「同志クルルギ」
「ん?」
 山盛りのカレーライスを持って座りなおしたクルルギが、間抜け顔をしてるのは見なくてもわかる。だから顔は上げなかった。
「俺のカレーは、ニンジンがはいっていないだろう」
「そうだな! 俺が嫌いだから入れないでくれているのだろう? 感謝している!」
「ああ。――だがな、」
「だが?」
「今日は入れた」
 すでに半分平らげているクルルギの手が止まった。正確には三人前と追加で一人前と半分の量がその腹のなかには収まっている。クルルギは目を丸くして皿の中身を見つめているのだろうが、すりおろしてから混ぜて煮込んだものをいまさら識別するのは難しい。
 溶けてしまっていてはなおさらだ。
「ど、同志……それは、本当、か……?」
 愕然としているクルルギの顔など見るまでもなかったが、ここは目線を上げて、真正面から笑いかけてやる。
 クルルギが好きな『善い吸血鬼』らしく。優しく、にこやかに。



とかしたチョコレートに沈めます




「いつもより美味いだろう? ――隠し味だ」










クルルギさんは脳筋のヒーロー志望で暑苦しい男だけれど、基本は誠実な善人なので、まったくモテないってこともないような気がしなくもない。長く付き合えば、まあ、女の子が十人いれば一人くらいは真剣に好きになってくれるんじゃないかなあ? とか、義理チョコにまざって、同期入社の地味めの女の子が勇気を振り絞った本気チョコ、とかもらっちゃってるかも? とか。

でもいままで2/14の収穫は毎年お母さんからもらったチョコだけだったと思われる、クルルギさんw

あ、ちなみに、クルルギさんは独り暮らしだけれど、両親は健在です。実家は既婚者のお姉ちゃんが継いでる、とか。ある日お母さんがアポなし訪問してきてジンホァさんとエンカウントすると面白いかも(笑)



さて、これでバレンタインはいちおうクリアしたので、当日用のお話が書きあがらなくっても大丈夫だぞ、とw


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Comments

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ミズマ。 : URL

2013.02.14 Thu 00:14

>バカめ。クルルギめ。
……ジンホァさんをいまいち変☆態だと認識できていない原因が分かりました。
クルルギさんと一緒だと、ただのかわいい人としか思えないからだッ!!щ(゚ロ゚щ)
ジンホァさんかわいいよ、ジンホァさん!! 嫉妬でニンジン煮込んで溶かすとか、かわいいよ!! クルルギさんの情緒がもっと育てばにゃんにゃんしてくれてもいいのに……ッ!!!щ(゚ロ゚щ)←

無許可の先は「まさか」と思って踏んだら自宅だったぜ! いつもありがとう朔ちゃん!ヽ( ´ ∇ ` )ノ

「バカ」と「クルルギ」を同列に並べてしまうジンホァさんがかわいくって辛い……。

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.02.14 Thu 15:16

お姉さま
>ニンジン
ルーのなかにはちゃんとチョコレートも入ってるんですけど、量的にはニンジン9:チョコ1なので、隠し味はほぼニンジンw カレーは味が濃いので子どもに嫌いなものをこっそり食べさせるのに大変有効です☆

>情緒がもっと育てばにゃんにゃんしてくれてもいい
クルルギさん、ダークサイド堕ちの中二病どころか、ヒーローになりたい小二病真っ最中ですからねえ……あれ、でもこの場合やっぱり、ジンホァさんは女モードになるんだろうか? それともやっぱり男モードのまま「左は譲らん」なんだろうか? なんにせよクルルギさんに押し倒されでもしたら、ジンホァさんテンパりそうで(笑) ジンホァさんは変☆態さんですが、この調子でクルルギさんとユリちゃんにガンガン矯正されていくのだと思われまーすщ(゚▽゚щ)フハハッ

ちなみにジンホァさん、お料理はクルルギさんと暮らすようになってからやむなく覚えので、そのうちユリちゃんといっしょにアキちゃんに料理習いはじめると楽しそうだなあ、とか。しばらくはまだお互い牽制が続きそうなジンホァさんとアキちゃんw

許可もなく(すみません;)お話をつづけちゃったのですけど、楽しんでいただけて何よりですー(*´꒳`*)

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