Aries.

Home > スポンサー広告 > スポンサーサイトHome > 小話 > Novluno Child 『酔っぱらいと無自覚エンヴィ』

--.--.-- -- スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2013.05.20 Mon Novluno Child 『酔っぱらいと無自覚エンヴィ』

とくにまったくオチも意味もないけども、書きたかったから、書いたよ! どうしよう日付変わってる月曜日!(涙目)










 女のにおいがした。
「ただいまーっ! 同志ーっ! ただいまーっ!」
「クルルギ、重っ……!」
 酔っぱらいの大男の千鳥足がもったのは、玄関からほんの数歩だった。冷蔵庫から水を出していたところに横合いから圧し掛かられ、いっしょになって倒れ込む。とっさのことで避ける間も押しのける余裕もなかった。
 大始祖の同族を吸血鬼などと呼ばわり敵視する人類解放戦線、暁の団という聞くも馬鹿馬鹿しい組織に属して「正義の味方」と自称するクルルギも、昼間はまともな会社に勤める人間の男だ。団の活動がない日に仕事付き合いの飲みに誘われれば、こうして夜中に前後不覚の有り様で戻ることもある。この国の人間にしては体格の良いこの大男は、見た目によらず酒にそれほど強くなかった。
 クルルギが泥酔して帰ってくるのは、だからこれが初めてではない。
 そんな時には酒や煙草や、食い物の臭いがつきもので、食い物はともかくヤニ臭さには辟易しながら、仕方なく布団に運んでやったりもした。
 けれど、今日は――女のにおいがする。
 酒や煙草や食い物や、汗くさい体臭や、そんなものに混ざって、ほんのり甘い香水と、化粧のまざった、女のにおいがした。
「飯は食ったかあ、同志ぃ……同志は細いからなあ! 俺がもっと、いっぱい、稼いで、たくさん食べさせてやるぞお!」
 クルルギは上機嫌で、身体を退ける気はさらさらないようだった。俺のことは丸めた布団か何かだとでも思っているのか、抱えるようにして、そのまま寝入ろうとする。
 抱き込まれたせいで、呼吸をするごと、いっそう女のにおいが鼻につく。
 会社の、仕事仲間かなにかだ。さもなければ店の女か。なんだってかまわない。俺には関係のないことだ。クルルギが人間の女とどうしようと、好きにすればいい。俺の面倒にならない場所で、乳繰り合うなりなんなり、どうとでも、勝手にしろ。
 思えば思うほど苛々した。
 アムリタでもなんでもない女のにおいなど、嗅いだところで面白くもなんともない。大体にして飲んで戻ったクルルギは雑多なにおいがして臭い上に、風呂も浴びていないからこうしてしがみつかれると汗がついて不快だ。そのうえ重くて息苦しい。力場で跳ね飛ばしてしまいたいが、「不憫な身上の吸血鬼」として「保護」されている身としては、めったやたらに手荒な真似をするわけにもいかない。面倒だ。
 面倒で面倒で、苛々する。
 そんなに何かにしがみついて寝たければ、どこのだれだか知らないが、この甘ったるいにおいの女を抱いて寝れば良かったんだ。人間の分際で。大始祖の同族、鬼神(グィシェン)の純々血、俺をなんだと思っている。
 クルルギめ!
「同志ぃ……」
 寝言じみて呟くクルルギの、シャツの襟を引きおろし、剥き出しになった首筋に牙を立てた。肌を貫いて肉を噛みしめる。傷口から滲み出す血といっしょに、口のなかに汗臭い体臭まで広がって、ただでさえ苦くて不味いものがさらに酷い味になる。腹立たしかった。
 女のにおいがするから余計に。
 思い知らさなければならないと、思った。どちらが優性か、上位か、所有しているのか、この馬鹿に刻み付けてやらなければならない、と。
 だから、えずきそうになるのを堪えて牙を突き立て、血を啜った。
 なのにクルルギは蚊に刺されたほども堪えていないのか、間の抜けた声で。
「んんー、こそばゆい……くすぐったいぞ、同志ー……同志は細いからなあ、俺が、稼いで、いっぱい食べさせてやるからなあ――」
 酔っぱらいの繰り言だった。その上、さらにぐっと抱き込もうとさえする。俺を。布団か枕かぬいぐるみのように。
 このまま眠られたらこの大男のむさ苦しい腕のなかで夜明かしする羽目になる。
 ぞっとした。どう考えても耐え難かった。夜明けが来るよりも俺が発狂するほうが早いに違いない。慌てて首筋から牙を抜き、腕を突っ張って距離を取る。
「――クルルギ! 起きろ! 寝るな! 寝るなら俺をはなしてからだッ!」
 力加減をしていて、クルルギの膂力に敵うはずもない。抗ってもじわじわ詰まる身体の距離に頬が引き攣った。こぶしで胸を叩いてやるがこの馬鹿のムダにぶ厚い筋肉はびくともしない。
 どころかクルルギはいっそうくすぐったそうに笑う始末だ。
「同志は細いからなあ」
「それはもういい! 三回目だぞ! 起きろっ、このっ」
「今日行った店の、あの、なんだ……串に刺さったのが、美味かった……」
「そんな話もどうでもいいッ!」
「同志は細いからなあ」
「うるさいっ、四回目だ! 余計な世話だ!」
「あの、串にささったのが、美味かったからなあ……つぎは、同志にいっぱい、食わせてやる……美味かったなあ」
「俺をっ、はなせとっ、言っているんだ! 聞いているのか!? 寝るなクルルギ――!」
 叫ぼうが叩こうが、クルルギは微動だにせず、高いびきをかきはじめるまでしばらくもかからなかった。その頃にはもう、女のにおいなどどうでもよくなっていた。
 面倒で厄介でむさ苦しい大男、クルルギめ。
 どちらが優性で、どちらが上位で、どちらが所有しているのか、かならず思い知らせてやる。
 ――かならずだ。










クルルギさんには、じつはクルルギさんに淡い想いを寄せている同期入社の同僚女子がいます。奥手な子。彼女なりに一生懸命がんばってるけど、相手がクルルギさんなのが悪かった。飲み会で隣の席になったのは今回がはじめて。女の子のほうはドキドキしちゃってまともにおしゃべりできなかったけど、クルルギさんが隣にいたからそれだけでもう今日はハッピーな一日だった、みたいな。

そんな時クルルギさんは、この店の砂肝の串焼き美味しいからジンホァさんに食べさせたいなあ、と、思っていたわけです。同志を飢えさせてはならんとかたく心に決めているクルルギさん。

ていうかジンホァさん、こんなに頻繁にちょーまずいクルルギさんの血飲んでたら、舌がおかしくなって、いざユリちゃんの血が飲める!なんて展開になっても、味がわかんないんじゃないかなー?


関連記事
スポンサーサイト

Comments

name
comment
我が君 : URL

2013.05.20 Mon 17:49

何だろう。うん。もぅ、2人付き合っちゃえば?笑
同志は細いから〜プロポーズとして受け止めてしまえば良いのに、専業主婦だよジンホァさん!羨ましい!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.05.20 Mon 22:19

我が君
きゃああああメールのみならずこっちにまで/// ありがとう愛してる(〃ノωノ)
ジンホァさんとクルルギさん、同棲中だからある意味もう付き合ってると言えなくもないってかたぶん近所のひとには怪しい関係のふたりだと思われているとw 思うのw そうだよ専業主婦だよジンホァさん! もう結婚しちゃえばいいんだよ! クルルギさんはいい旦那さんになると思うんだよー、かなり暑苦しいけども(笑)

ミズマ。 : URL

2013.05.22 Wed 00:11

戸籍なら天羅で用意できるだろうから、結婚しちゃえばイイんだヨ☆←

怪しい関係の二人www
そんな噂を聞いたユリちゃんが、目ぇキラキラさせて
「ジン、クルルギさんと付き合ってるんだ! おめでとう! すごいね、ラブラブだね!」
とか無邪気な感じで聞いてくる様子が脳裏に浮かんでジンホァさんェ……www
その頃には「実際付き合ってるかどうかと問われれば否定するのも大人げない関係ではあるのだけれど、ユリにこう問われて素直に「ありがとう」と返答できるものではないこの微妙な心情をどうすれば……!」という感じになっていると良い。

クルルギさんに淡い想いを抱いている女の子に、想いを寄せている同僚がいて、あるきっかけでそっちがくっついちゃって、ふとした拍子に「前はすごい好きだったんですよ」とか告白されて微妙な心境になるクルルギさん、とか。
「同志よ、私はにぶちんなのだろうか」
「なんだ、今さら」
「振られていないのに、なんなのだこの喪失感は!」
「ええい、うっとおしい、離れろ!」
とかになるといいなぁ。でもま、当て馬がいないとここも発展しそうにない二人であるなぁ、とか思います。
ジンホァさんに一目ぼれする人間の男の子/女の子とか、いないのかなぁ。クルルギさんが嫉妬とか、しないのかしら?
……ちょっと考えたけど、「嫉妬」という概念を理解していそうにないんだけど、私の中のクルルギさんwww
まさかそこまでお子様ではない、はず、だ、よ、ね?

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.05.23 Thu 00:32

お姉さま
ジンホァさんはぐれ者だから、本人さえその気になったらわりと簡単に天羅預かりというしっかりした身分を得られて、生活の保障(血的な意味で)もバッチリなのになー。それこそ戸籍とかも。バッチリなのになー←

>クルルギさんとジンホァさん
現時点ではユリちゃんはジンホァさんを完全に男だと思ってるはずなのに、クルルギさん♂とジンホァさん♂が付き合っていると聞いて、曇りなき眼で「おめでとう!」と言えちゃうユリちゃんになんというかやっぱりこうユリちゃんは大きく包み込む安心の風呂敷系ヒロインだなあ……と、思いました!(笑)
あ、でもその頃にはジンホァさんの身体的なことも知ってたり? する? のかな? でもジンホァさんの現状の心境だと、ユリちゃんには男だと思っててもらえたほうが嬉しいはず。自分からは言い出しそうにないなあ。

>「同志よ、私はにぶちんなのだろうか」
クルルギさん可愛すぎてwww にぶちんwww 可愛いwww
このあともクルルギさんがしつこく落ち込んでるから、ジンホァさんが段々モヤモヤし始めて、すごく機嫌が悪くなるんだけど、クルルギさんはサッパリわかってなくて、ジンホァさん「もういい! 飯だっ!」ってまたチャーハン皿テーブルに叩きつければいいかとw ジンホァさんはストレスを料理にしてぶつけるタイプなのかw

>クルルギさんが嫉妬とか
……、……、……、……、……、え? クルルギさん、嫉妬、するの……え?
(そんな高度な感情は理解してそうにもない安定の小二w)

comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。