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2013.05.23 Thu Novluno Child――恋のような衝撃と哀情。 その3-4

歌さまのお題サイト50題に挑戦、ひきつづきフェアリー強化月間、ペース配分無計画なの――いくない!(訳:あと何回か計算できなくなりました☆)










   ***



「アーキーちゃん、ちょっとおいでー」
 うっかり振り向いてしまったから、もう聞こえないふりでやりすごすことは出来なかった。事務所のぼろのソファに腰かけて、イクヤさんが手招きする。忙しいです、と言ったって、たぶん聞いてくれないと思う。本当は家事ももうそんなにない。
 いつもなら、名前を呼ばれればそれだけで、すこし嬉しくなるはずなのに。
 気が進まないのがそのまま足取りにあらわれて、のろのろ近づいて行くと、手を取って引き寄せられた。片足を座面に上げて横向きに座っているイクヤさんと、向い合せになるように。わたしもソファに横座りする。
 イクヤさんは、手をとったまま、はなしてくれない。
「あのね、アキちゃん」
 遠慮がちな声と、気をつかって様子をうかがうような視線をまともに見返せず、すこしだけ目を逸らした。ばれませんように。でもきっと気づいてる。
 気づかないわけがない。
「そろそろ元気になってくンないと、心配で、俺も結構しんどいから。悩んでるなら話してくれる?」
「……すみません」
「謝ってほしいんじゃなくて、あー……ごめん、俺の言い方が悪かったです」
 イクヤさんが悪いわけじゃない。ずっと落ち込んでいるのはわたしのせい。うつむいて頭を振ると、そっと撫でてくれるけれど。
 いまはそうしてもらうのも悪いような気がして、ちゃんと顔を上げられない。
「ゴウダなら、怒ってないし、大丈夫よ。あいつの機嫌が悪かったのはさ、どうせまた俺の何かが癪に障っただけだろうし。アキちゃんのせいじゃないよ」
「でも……」
「噛みついちゃったのは、仕方ないじゃん。アキちゃん具合が悪かったんだもの。あいつみたく血の濃い奴がさ、無防備に目の前にいたら、そりゃだれだって、弱ってる時には噛みたくなっちゃうよ。仕方ない仕方ない」
「でも、」
「俺がいっしょにいてさ、ちゃんと、看てれば良かったんだから。アキちゃんは悪くないってば。あいつも気にしてないよ。大丈夫だから」
 根気よくなぐさめてくれるイクヤさんに、はい、と言って、うなずいてみせたい。
 そう思うのに、顔も上げずに首を振っていた。困らせてしまうのに。イクヤさんはきっと弱り顔をしてる。それを見てしまうのがこわい。聞き分けのない子どもだと、思われたくないはずなのに。
 はい、わかりました――と、そのたった一言を、どうしても口に出来ない。
「アキちゃん」
 そっと額を撫でられる。前髪を横へ流すように。
「俺には話にくいンだったら、ユリちゃんとこに行ってみる? 最近、ユリちゃんともおしゃべりしてないでしょ。連れて行ってあげるよ」
「――だめですっ」
 顔を上げると、イクヤさんはすこし驚いたみたいで、青い目をしばたかせながら、表情をとりつくろおうとしていた。困ってる。やっぱり。
 またうつむいてしまうのは我慢したけれど、思わず逸らした目をもう一度向ける勇気は出てこない。
「ユリちゃんは、だめ、です。いまは、会いたくないです」
「なんで?」
「話したくないです」
「どうして?」
「だって、わたし……」
 身体が強張った。繋いだままになっているイクヤさんの手をぎゅっと握ってしまったけれど、力の抜き方を思い出せない。だって。
「ユリちゃんに、こわいと、思われるのは……いやです」
 ゴウダさんに噛みついた。傷つけて、痛い思いをさせてしまった。ゴウダさんはきっと怒ってる。どうすればいいのかわからない。
 相談すれば、ユリちゃんは、話を聞いてくれるだろうけれど。
 ユリちゃんはわたしよりうんと物知りだから、どうすればいいのか、上手なやり方も知っていて、教えてくれるのかもしれないけれど。
 こんな相談は、ユリちゃんにはできない。したくない。だからメールも電話もしていない。だってユリちゃんはアムリタだから。アムリタを狙った同族に襲われて、すごくこわがっていたのを知っているから。同じように――こわがられてしまうのは、悲しい。
 嫌われたくない。
 ユリちゃんにも、ゴウダさんにも。嫌われたくないのに。
 どうすればいいのかわからない、もっと上手に隠したいのに。
 もっと「良い子」でいたいのに。
「美味しそうだと、思って」
「うん」
「すごく、いい匂いがして。ゴウダさんの血が、美味しそうだと、思って。本当は、いつも食べてる血(ごはん)より、同族の、純血のほうが、美味しいのにって、思って――」
「うん」
「でも、同族喰いはだめだって。悪食だから、だめだって。教えてもらったから、ちゃんと、我慢してた、のに、」
 カヤの血は濃くて、重くて、美味しかった。










――呼んだ? って、革張りのソファに脚組んで座ってドヤ顔してるカヤ兄が脳裏に浮かんではなれない件。


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Comments

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ミズマ。 : URL

2013.05.23 Thu 23:16

アキちゃんかわいいなぁ、かわいいなぁ、ユリちゃんが音沙汰ないアキちゃんを心配して突撃してくれればいいのになぁ、「怖くなんてないんだから!」ってぎゅっ、ってしてくれればいいのになぁ、とニヨニヨしていたところに、

>呼んだ? って、革張りのソファに脚組んで座ってドヤ顔してるカヤ兄が脳裏に浮かんではなれない件。

笑いましたけどwww声出して笑いましたけどwwwwww

あー、もう、アキちゃんが超かわいい回なのに全てカヤ兄がもっていったよう、朔ちゃんwww

今回のイクヤさんはちゃんとしてたなー、と思いました。← ちゃんと年上のお兄さんというか保護者っぽいことをしているなぁ、と。このアキちゃんの怖い怖いって思いをどうやってほぐしていくのかしら、楽しみです(〃▽〃)

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.05.25 Sat 21:32

お姉さま
カヤ兄の破壊力、プライスレス☆(笑)

>今回のイクヤさんはちゃんとしてた
してるんです、イクヤさんちゃんとしてるんですよ! じつはいままでも結構ちゃんとしてたんですけども、その描写をする隙もないくらいイクヤさんがヘロヘロ&ヘタレていたっていうw
イクヤさん、はじめての育児なのにわりとちゃんと保護者やってるのは、大体リリコさんのおかげです。リリコさんは、いっぱい甘やかして、守ってくれて、ちゃんと叱って、話も聞いてくれる、良い保護者でした。イクヤさんにとっての「親」って、父性よりも、リリコさんの母性的なイメージが強いのかもしれないなあ、とか。思いました。

>「怖くなんてないんだから!」ってぎゅっ、ってしてくれればいいのになぁ
ユリちゃああああああああん! かわいいよユリちゃあああああああああああん! 結婚してくれぇええええッ!!щ(゚▽゚щ)
ユリちゃん、なんでこんなに可愛くてたのもしくてステキに無敵なんですかね? ヒロイン力? これがヒロイン力ですかユリちゃああああああああん!(*ノД`)ノ←鎮まれ。

ポール・ブリッツ : URL

Edit  2013.05.26 Sun 12:40

ささげもの書きました。自他ともに認めるgdgdぶりをさらしていますが、よかったらどうぞ。(^_^;)

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.05.26 Sun 22:42

ポール・ブリッツさま
拝読いたしましたぎゃ―――――っ、残念なひとぎゃ―――――っ!(※歓喜の声)
(*ノД`)ノま、待ってた……卯月、待ってた……!

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