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2013.05.30 Thu Novluno Child――恋のような衝撃と哀情。 その3-6

歌さまのお題サイト50題に挑戦、ひきつづきフェアリー強化月間、つぎの次くらいで終わりそうな予感だけはしてる。←











 ぎゅうっと、心臓が動かなくなったような、気がした。音が遠くなる。見えているはずのものがよくわからなくなる。ゴウダさんが言う。
「彼女も、もう……ちいさな子どもでは、ないだろう……むかしのように、俺や、お前しか、頼れる相手がいないわけでも、なくなった。ユリさんや、カイさんになら、安心して任せられる、と、思う……彼女も俺といるより、そのほうが――安全だ」
 そこから先の会話は頭に入ってこなかった。全身から力が抜けて、ドアの前にしゃがみこんでいた。どうしよう。もう待っていても呼んでもらえないのはわかっているけれど。
 だとしたらどうやって、このドアを開ければいいの?
 だってゴウダさんは、わたしがいなくてもいいと言っていた。
(ゴウダに嫌われたくなくて)
(アキちゃんは、どうしたいの?)
 どうすればいいのかなんて、むずかしくてわからない。「良い子」でいればいいのだと思っていた。でも、だめだった。上手にできなかった。「悪い子」だから、嫌われてしまった。
 ゴウダさんに嫌われたくないのに。
 このドアを開けて出て行くのが、こわい。恥ずかしい。
「――アキちゃん」
 イクヤさんの声だった。廊下の、すぐそこにいるみたいだった。
 身体が強張って、息が詰まって、返事はできなかったけれど、イクヤさんはそのまま続けた。
「ゴウダは帰ったから、出ておいで」
 そう言うならドアを開けて欲しい。立ち上がって、ノブに手を伸ばすことができそうにない。どんな顔で出て行って、何を、どうすればいいのかも、わからないのに。
 ちゃんとしなくちゃいけないのに。上手にできないとだめなのに。
 もっと「良い子」でいたいのに。
「あのね、アキちゃん」
 イクヤさんはドアを開けてくれない。
「たとえば、俺はさ、アキちゃんがこのまま、ずっと、そうしてたっていいんだ。アキちゃんがそれでいいなら、俺もそれでいいと思う」
 閉じたドアの向こう側から、ゆっくり、そっと、話しかけてくるイクヤさんは、言葉を探しながらしゃべっているみたいだった。やわらかい声で。なるべくやさしい言葉を、探してくれているようだった。
「けどさ――アキちゃんは、いやでしょう? このままは、しんどいでしょう?」
 ゴウダさんとお話ししたい。
 あれから毎日考えている。どうすれば「今まで通り」にできるのか。考えれば考えるほどこわくなった。拒絶させてしまったらどうしよう。受け入れてもらえなかったらどうしよう。「今まで通り」に出来なかったら、どうすればいいだろう。
 考えるほど動けなくなる。
 失敗するのがこわくて、上手にできなければ恥ずかしい。
「アキちゃんが、こわいと思うのも、恥ずかしいと思うのも、だから逃げたくなっちゃうのも、わかるけど」
 イクヤさんの口調はどこか自嘲めいて、ドア越しに青い目が見えたような気がする。細く、苦笑じみながら――すこし、泣き出しそうに。
「あいつが、明日もちゃんとここにいて、生きてるって、約束はないよ」
 その言葉に、全身の血がどくっと、脈打った。
 心臓を掴まれたみたいに。
「生太刀(おれ)も、万禍識(あいつ)も、ちょっと運が良かっただけなんだ。たまたま当たったラッキーだけで、ここにいる。アキちゃんは、自分のことだけ引け目に思ってるかもしれないけど、そんなことないよ……だれでもみんな、いろいろある」
 だからね、と、イクヤさんが言う。ためらうように、ひとつ大きく息を吐いて。
「あいつがアキちゃんのことを、好きだとか、きらいだとか、一緒にいたいとか、いたくないとか。そんなのは関係なくてさ。もしかしたら今日が最後で、二度と会えなくなるってことも、ないわけじゃない。大丈夫だって、約束はできない」
 ――忘れていた。
 イクヤさんも、ゴウダさんも、生太刀と万禍識は、同族の鬼子。血を穢したと嫌われる混血とさえ比べものにならないほどの、憎悪と畏怖を受けている。特別な二人。
 天羅のひとたちは優しいから、忘れてしまっていた。
 生太刀も、万禍識も、本当ならとっくに「ここにはいない」。
「アキちゃんの気持ちは、わかるよ。俺には……よく、わかるんだ」
 失敗するのはこわい、上手にできなければ恥ずかしい。
 どうしていいのかもわからないけれど。
「それでも、なんとかしたいなら、どうにかやらなくちゃ。やり方がわかんなくてもさ。かっこよくできなくてもさ。とにかく何かしなくっちゃ、ここにいるうちに。手遅れになるまえに」
 立ち上がって。
「なんにもしないまま、出来ないまま、やり直しが効かなくなって後悔するより――そのほうが、全然いいよ」
 ドアを開ければイクヤさんがいた。
 ずっと息を詰めていたから、すぐには声が出てこない。唾を飲むにも力がいった。心臓がどくどく拍車を打つ。頭のなかがぐるぐるする。うまく言葉にできなかった。いろんなことを一度に口に出来ればいいのに。ただ、はやくはやくと、そう思う気持ちだけがはっきりしている。それを上手に伝えられなくても。
 イクヤさんは微笑んでうなずいてくれた。
「ゴウダは怒ってないよ。大丈夫だから。がんばってごらん。――行っておいで」
 俺たちはアキちゃんが大好きよ。
 その言葉で、全身に血が通うみたいだった。縮こまっていた身体に熱がおこって、ためらっていたのが嘘みたいに駆け出せた。はやくはやく。事務所を出て廊下を走る。このビルにはわたしとイクヤさんしかいないから、足音が大きく響いている気がした。はやくはやく。ポケットから携帯電話を出してコールする。
 くりかえしの呼び出し音が途切れたのは、外階段の踊り場に出た時。
「――ゴウダさん!」
 錆の浮いた鉄の階段を駆け下りながら、声も聞かずに叫んだ。電話に向かって大きな声でしゃべっちゃだめよ、耳が痛むからね、って、以前(まえ)に言われたけれど。加減していられなかった。
 降りきるまであと半分。
「ゴウダさん、どこにいますかっ? 待ってください、どこにいますかっ?」
『あの、まだ、』
「すぐに行きますっ、だから――」
 困惑気味に返ってくる声にかぶせて言った。「まだ、」近くにいるんだと思う。帰っていないかもしれない。ゴウダさんの車は黒い、外国の車で、いつもビルの表に停めている。
 地上まであともう少し。
「待っててください!」
 階段の最後の一段を蹴飛ばすように降りて、つまずいて転びそうになりながらビルのかげから表に回る。黒い車が停まっていた。運転席からひとが出てくるところだった。
 真っ黒なスーツに真っ黒な髪と背の高いおおきな身体。
「アキさん」
 呼びかけられたのと、わたしが抱きついたのと、いったいどちらが早かったのか。背中に腕を回して、ぎゅうっとしがみつく。どうすればいいかなんて、わからないけれど。
 これだけははっきりわかってる。
 嫌われたくなかった。今まで通りでいたかった。声を聞いて話したかった。
 わたしは、ただ――。

 ゴウダさんに会いたかった。










アキちゃん、見た目はにゃんこだけども、性格的にはウサギさんなのかもしれない。


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Comments

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たぬ : URL

2013.05.30 Thu 23:37

フェアリー強化月間なのに…フェアリー強化月間なんだけどっ!!

やっぱり私はイクヤさんが好きなんだとあらためて実感した。
してやられた!!
大好きです、イクヤさん///

ミズマ。 : URL

2013.05.30 Thu 23:46

いやだなにこれもう、そのまま車に乗り込んで新婚旅行ですか!
車の後ろにはたくさん缶つけてな!
大丈夫、その辺はヒロくんが万事抜かりなくやってくれてるって!
ゴウダの舎弟は有能だよぅ!!!ヘ( ̄▽ ̄*)ノ・ ・.♪ヒャッホーイ♪.・ ・ヾ(* ̄▽ ̄)ノ


いやもうなんですかこれ、お腹いっぱいでニヤニヤしてしまうう!! ウサちゃんアキちゃんかわいい! かわいいよ、ウサギさんアキちゃん、かわいい!! ぴょん、ってゴウダに抱き着くアキちゃんマジ天使ぃ……///


そして前半は
「え、イクヤ、さん……、え? これ、イクヤさん、え、えぇ?」
となったのは私だけじゃないハズだw
やー、イクヤさん、大人になったのだねぇ。隠し撮りした映像を見ながらおやっさんがほろりと涙するかもしれない。……隠し撮り?w

>「あいつが、明日もちゃんとここにいて、生きてるって、約束はないよ」
そうだった、なぶるの、シリアスだったんだ……!!!←
やばい、超真に迫ってるっていうか、超切ないよ、イクヤさん。

送り出すイクヤさんは完全に「花嫁の父」ですけど、私としてはイクアキかなぁ、と思っているので、
「ここまでお膳立てとしいてアキちゃん掻っ攫わないんだから俺が取り返しても文句はないよな?」
ということですか、イクヤパパ!ヽ( ´ ∇ ` )ノ

いやー、イクヤさんも日々成長しているのだなぁ。←どこ目線だ、私よ。

ひょーか : URL

Edit  2013.05.31 Fri 21:14

いっいっ……イクヤさあああああん!!
不意打ちでした。完全にやられました。
どうしてそんなにかっこいいんだ……っ!

あ、でも、その。
わたしはフェアリー万歳なゴウダさん至上主義なので……。
えっと、あの、妖精と乙女が戯れているのはとてもすてきだと思います。
すてきだと思うのです!!(大切なことなのでry)

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.06.02 Sun 00:12

たぬさま
揺るぎないイクヤさん愛をありがとう! そして前の雨の日に猫拾ったイクヤさん回ではゴウダが人気だったような気がするのに、ゴウダ回でまさかのイクヤさん人気w なぜだーwww
いや、いいんだけどね! イクヤさんもヒーローだから! なぶるのはWヒーローでお送りしてるからいいんだけども!(笑)


お姉さま
>イクヤさんも日々成長しているのだなぁ
雨の日に猫拾った話→アキちゃんの家出編→おとしまえ編、と、段階を経ているのでさすがのイクヤさんェもそれなりには! 成長しているのですよ!(だと、いいな☆←)

>ゴウダの舎弟は有能だよぅ!!!
ヒロくん、ハイスペックwwwww 彼ほんとうに育て方によっては次期天羅の右腕も夢じゃない気が、イロハお兄ちゃんとツートップでやってほしい!ヾ(^▽^ヾ)

>ウサギさんアキちゃん
そして可愛いヒロインがふいに飛びついてもどっしりと支える安心設計のフェアリー・ゴウダ。でも内心はそれこそ心臓停まりそうになってるんじゃないかな、って!w

>隠し撮り
おやっさんwwwww過保護すぎるwwwww

>なぶるの、シリアスだった
実はそうなんですよ……ね!← 表でコメコメとかラブラブとか裏でべーこんれたすとかやってても、じつはシリアスななぶるのを今後ともよろしくおねがいします!(突然の宣伝。
イクヤさんは、サキさんのことも含めていろいろあったけどこの思考に行き当たったのは過去編でアキちゃんと出逢ったおかげなので、やっぱりヒロインはアキちゃんだなあ、と。そしていまだイクアキなのかゴウアキなのかなぞのままです、Wヒーロー×ヒロイン。


ひょーかちゃん
ひょーかちゃんまでもが、イクヤさんに不意打ち喰らっている……! なぜフェアリー月間のゴウダ回で本気出してるの、イクヤさん(笑)

>妖精と乙女が戯れている
あれ卯月こんな素敵キャッキャウフウフの洋風ファンタジー書いてたかしら? と、一瞬www 妖精のほうは黒づくめの大男ギャングスタなんですけど、なぜだかほんわかするという驚愕のフェアリー力(りょく)、ゴウダクオリティ! ゴウダにラブコール×2ありがとうございます! ゴウダ回はもうちょっと続きます(が、しかし卯月が書くの遅いですけども;)、よしなにお付き合いくださいませ! ませませ!ヾ(´∀`*)ノ

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