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2013.06.18 Tue Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その1

というわけで、これだけあからさまな書けない期に突入しているにもかかわらず、性懲りもなく「その1」です! 何考えてんの卯月! いやむしろ卯月が何か考えてやったことがあっただろうか!?(ババーン!

鈍足更新に期待が高まる今回は、カイユリ番外なのであります! 世界観はなぶるのだけど、カイユリはお姉さまのだから、卯月が書けばカイユリ番外だよヾ(´∀`*)ノ

番外なのにこんな展開いいのかなあ……という、不安を抱えつつ、追記からどーん。









 始祖ノスフェラトゥの血族において由緒正しい純々血の家に生まれたフランチェスカには、ざっと百年ほど想い焦がれる相手がいる。
 衝撃的な運命の出逢いよりこちら、明けても暮れても彼を想い、その姿を心に抱き、彼の口からたった一言を聞くためだけに日々を過ごしてきた。百年である。より正確には七十年だが、フランチェスカにとっては一日ですら長く思える年月だったのだ。百年どころか、千年と比べてもより長かったと言えるほど。
 そんな長い長い時間をかけて、彼女はついに決心し、極東の島国までやって来た。
 銀色の髪、浅黒い肌、氷色の青い瞳――。
 長年、想いつづけた彼のために。

「――ご機嫌よう犬っころ! あたくしの顔を憶えておいで? いいえ忘れたとは言わせなくてよ! さあ、さあさあさあ! まずはあたくしの百年の成果を! お召しあそばせ! もう美味しくないとは言わせませんわ!」

 玄関チャイムの呼び出しに応じてみれば、頭の先から足の先までお嬢様スタイルで全身キメキメ、グリグリ縦ロールの赤毛の女が仁王立ちして待ち構えていた。朝っぱらから血圧を上げたその顔と、彼女が突き出す豪勢なホールケーキを目だけ動かして交互に見比べ、カイはただでさえ寝起きでしまらない頬をげっそりさせる。
「……何やってンだ、フランチェスカ……」
「愚の骨頂! 道場破りですわ!」
 それを言うなら愚問だろう。
 満面の笑みを浮かべるフランチェスカの意図はサッパリわからないが、これはろくでもないことになりそうだ――と、カイは天井を仰いだ。



   ***



「まだるっこしい話は後回し、ともかくひと口お食べなさい! さあ!」
「起き抜けにンな甘ったるいモンが食えるか」
 鼻先に差し出されたホールケーキに顔をしかめると、フランチェスカはあからさまに機嫌を損ねた様子でむっと眉根を寄せた。そのまま怪訝そうにカイの姿をとっくり眺め、
「だらしのない事……総領血統の男が、いったい何をしてそんなに疲れておいでに? あたくしなら七日七晩眠らなかったとしても、来客に隙など意地でも見せませんわ!」
「いや、寝てンなァ毎日だが」
「毎日ッ!?」
 ひっくり返ったフランチェスカの声に、カイは眉間のしわを深くして顔を背ける。女の高い声は苦手だ。寝起きだとなおさらに。
 そこに来て、視線を向けた先に廊下をぺたぺた歩いてくる寝ぼけ眼の小娘の姿などあれば、いよいよ頭が痛くなる。朝から脳みそを酷使する展開だ。フランチェスカがここにいる理由もまだ訊いていない。もっと眠っていればいいものを。
「んぅー……カイ、どおしたのー……?」
「奥にいろ、ユリ」
 追い払おうとしてもムダだった。朦朧とした足取りで、目もまともに開いていないユリは声に引かれてカイのそばまでやってくる。
 カイの旧知であるところの天羅総領補佐、キリヤマの息子たちはこの家をDVDの保管庫か何かだと思っているらしく、先日またしても新しいホラー映画をどっさり持ち込んだ。自宅に置いていると母親のリリコが掃除ついでに見つけて縮み上がると言うが、うちにも多感な年頃の小娘がいて――という言い訳は効力を失って久しい。昨夜も新しいDVDを観ながら、気付けば二人してリビングのソファで寝入ってしまった。
 怖いシーンになると騒ぎながら布団をかぶって防御姿勢をとり、そのまま寝落ちすることの多いユリの朝は大概ひどいありさまで、いまも長い髪をほつれさせ、この頃は暑くなって寝苦しいのか、パジャマの胸元はボタンみっつほど豪快にはだけている。
 カイは思わずその襟元を合わせてやりながら、
「とんでもねェ格好で出てくンな。客が来てンだぞ」
「だって、起きたらカイがいなかったし……あのね、いっしょにいないと内臓の緑のゴリラが爆発して、カイのお花畑に定規が生えるから、三十一センチになったらすぐに収穫しないと眼鏡がカビちゃうんだけど、でも目盛が三センチきざみで大変……」
「キリヤマなんざカビようが腐ろォがほっときゃいいだろっ、地味にグロい夢見てンじゃねェ、立ったまま寝るな!」
 カイのみぞおちに額を打ちつけて倒れかかり、それを支えに二度寝しようとするユリの肩を持って引き剥がす。その衝撃に「ぅうー」とうなりつつ、ユリはしかめっ面を擦りながら軽く頭を振った。どうやら目を覚ます気になったらしい。
 玄関先で寝こけられる事態だけは避けられた――と、息吐く間もなく、カイは異様な気配を感じて振り向いた。見れば一般家庭の玄関には不釣り合いにド派手なフランチェスカが、存在感たっぷりのホールケーキを持ったままわなわなと震えている。
「あ、あ、あ……あなたって男は……」
 自分とユリを交互に見るフランチェスカの目の動きに、カイは聡くため息を吐いた。
「面倒くせェから先に言っとく、そりゃ確実に誤解――」
「――ハラダシ! なんてハラダシな男ッ!」
 思わずうつむいてたしかめた腹部はもちろんタンクトップの裾がめくれあがっているなどということもない。しばらく考えてから、顔を真っ赤にして母国語で騒ぎ立てているフランチェスカにカイは言う。
「ハレンチの間違いか?」
「話を逸らさないでくださるかしらッ」
「むしろてめェの微妙にお粗末な日本語のせいで逸れてンだろォが。だからこいつとはそういう仲じゃ、」
「大始祖直系の血筋でありながら、その歳になってまだ伴侶を連れていないどころか子どももつくらず、年端もいかない人間の子どもとフジダナな関係になっているだけでも正気を疑いますのに、こうして現場を押さえられてもまだ言い逃れしようなど……まったく同族の面汚し! 怨敵調伏!」
 怨敵も調伏も今時日常会話で使わねェよ、という気力もなくカイはげんなりした。このテの勘違いはもっとも敬遠したい部類だ。しかもよりにもよってユリが相手――そうだ、ユリはどうした。
 かたわらで目をこすっていた少女の存在を思い出し、やけに静かだがまた性懲りもなく寝ようとしているのではないかとカイが目をやるのと同時に、なにかの影がぐわっと視界に走った。手だ。ちょっと加減を間違えれば掴んだ拍子に折れそうな、子どもの腕。
 すっかり意識を覚醒させて高々と万歳するユリの視線の先にはフランチェスカのホールケーキ。
「ケーキだあーっ! カイ、食べたい!」
「だから来客中だッつってンだろ、手をおろせっ。作ってやっから」
 引き下ろした端から「やったー!」と歓声とともに上昇しかかるユリの手をつかまえたまま、カイはフランチェスカを顧みた。
 いよいよ顔色を変えた同族のお嬢様が、力み過ぎて青くなりつつある唇から言葉を発するより早く。
「こいつァ俺が預かってる、天羅のアムリタだ」
「――アムリタ?」
 フランチェスカはビューラーとマスカラと完璧なアイメイクで盛りに盛った目をきょとん、としばたかせる。
 すぐに鼻先をひくつかせ、ハッとした様子で、恥らうように苦笑いした。
「ま、まあ、まあ! 本当に! そうみたいですわね! こんなにかぐわしい血の香り、どうしてすぐに気付かなかったのかしら、あたくしとしたことが!」
「そりゃ、玄関(ここ)にゃ念のため同族除け効かせてッから」
「それもこれも、あたくしのケーキがアムリタの血を上回るほど甘美なせいですわね!」
「……」
 片手でホールケーキの支えながら、もう片手を腰に当てて高笑いするフランチェスカ。
 そして彼女の持つケーキから視線を外すことなく、こちらも目覚めつつあるらしい腹の虫をきゅるきゅると鳴かせはじめているユリのあいだで、カイはふたたび天井を仰いだ。ユリが学校に行く前に見ている朝のニュースの星座占い。あんなものは髪の毛筋ほども信じていないが、今日はきっと最下位にちがいない。
 なんでもいいから早いところ、この玄関先の立ち話から解放されたかった。
 両肩にのしかかる疲労感とともに、起床して一度も落ちつけていない腰を椅子に置きたい衝動に駆られ、カイはひとまずこの場を締めることにした。
「――で、何しに来たんだ、フランチェスカ」
 ふりだしに戻った会話にフランチェスカは笑い止み、
「道場破りと言ったでしょう、あの日の遺恨を晴らすため、あなたにあたくしの渾身のスイーツをお見舞いしに来たのですわ」
「そンだけか」
「でしてよ」
 馬鹿馬鹿しい、とばかりに鼻息をひとつと、それから。
「ついでにあなたと子づくりもする予定ですけれど、そのようなことはシャモジです」
「しゃもじでも些事でもねェ! 本題だろォがッ!」
 思わず律儀にツッコミを入れながら、フランチェスカに詰め寄ってカイは吠える。ろくでもないことになりそうだと思っていたがハードすぎだ。
 ――ちくしょう!










フランチェスカさんの口調がおそろしいまでにカイさんの義妹とカブっている件……!ゴクリ…

できれば10回更新くらいでおさめたいなあ、と、思っているけど予定は未定☆


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