Aries.

Home > スポンサー広告 > スポンサーサイトHome > 小話 > Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その2

--.--.-- -- スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

2013.06.23 Sun Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その2

お姉さま宅で素敵なカイユリ夏休み編が幕を開けているこの最中に、卯月がこんなお話を書いちゃっていいの!? 大丈夫なの!? アウトじゃない!? という不安に駆られつつでももそもそ書いている次第ヾ(゚∀゚ゞ)

というわけで、卯月のカイユリ番外はつづきます。









   ***



「でね、朝から大騒ぎ! カイは天羅のおじさんとこに行くって、すごい剣幕で!」
「そうだったんですか」
「カイのあの慌てっぷり、子づくりとか、思い出してもウケるー!」
 今日は日曜日で、本当はわたしがユリちゃんのお家に遊びに行く約束だったけれど、予定変更でカイさんがユリちゃんをうちに連れてきたのには、そういう理由があったらしい。アキにも見せたかったなあ、って、ユリちゃんはずっと面白そうに笑っている。
 ユリちゃんは、犬のシルエット柄のリュックサックに昼夕二食分のお弁当と、お菓子と、飲み物と、それから雑誌やシールをたくさん用意していた。シールは携帯電話をデコするための物で、デコってよくわからないけれど、ユリちゃんが言うには好きなシールを貼って電話を可愛くすることみたい。どれでも使っていいよってすすめられたから、お花とケーキのシールをもらうことにした。ユリちゃんは古くなったシールを新しいのに変えると言って、いろいろ吟味しているようだけれど、手にとるのは犬のシールばかりだ。
 事務所の奥にある部屋のベッドにユリちゃんの持って来たものを広げ、ふたりで座って、おしゃべりをしながら遊ぶのは楽しいけれど――カイさん、大丈夫かしら?
 これってとても大変なことじゃないのか、どうなのか、考えているとドアがノックされた。
「ハロー、イクヤさんでーす。お邪魔してもいーい?」
「はい」
「はぁーい」
 応じると、イクヤさんは肘と肩とで器用にドアを開けてはいってくる。両手で持ったトレイにはお菓子を盛ったお皿と、グラスがふたつ。それからレモンティのテトラパック。
「ユリちゃんの飲み物、氷もいれちゃだめかな。冷やさなくていい?」
「冷やしてあるんで大丈夫です」
「さすがに準備がいいねえ。コップはこれね、使って」
「わんちゃんだー!」
 トレイをベッドに置いたイクヤさんからグラスを受けとったユリちゃんが、それを目線の高さまで掲げて「わあっ」と声を上げる。
 その声にもごもごしてしまう口元を隠したくて、うつむいたのに、イクヤさんがふふっと笑って、
「うちの子がまえから用意してたのよ。今度、ユリちゃんが遊びに来たら出すんだーって」
「そうなのっ、アキ? わざわざ? ありがとーっ!」
「ユリちゃんは、犬の柄が好き、なので……喜んでくれれば、嬉しいです」
 気恥ずかしさを紛らわせるために、テトラパックをとってグラスに注いだ中身をいっきに飲み干した。くすくす笑っているイクヤさんがうらめしい。今日はお仕事がはいっていなくて、イクヤさんがずっと家にいるから、だからユリちゃんが遊びに来てもいいということになったのだけれど。わざわざユリちゃんに話してくれなくてもいいと思う。
 ユリちゃんが喜んでくれたのは、本当に、嬉しいけど。わたしがすごく浮かれているみたいだから、恥ずかしいのに。
「それにしても――」
 お皿に持って来たわたし用のお菓子をつまみ食いしながら、イクヤさんはユリちゃんが持って来てくれたシールのシートを一枚拾って、裏表とひっくりかえしたりしながらしげしげ眺めた。
「ユリちゃんはずいぶんワンコが好きね。ワンコ、ってか、狼? かな?」
「うん!」
 水筒からアムリタ用のすごい色と微妙な粘度の飲み物をグラスに注いで、ユリちゃんは満面の笑顔でうなづいた。グラスを持っていない手でイクヤさんに突きつけてみせた携帯電話には、犬のシールのほかにも、たくさんぶら下がっているストラップのなかに狼型のチャームが混ざっていたりする。
「カイみたいでしょ?」
「もっとしかめっ面なら完璧ね」
「たしかにー!」
 ユリちゃんは笑いながら、使い慣れた様子で携帯電話を片手操作して、またヒヒヒッて肩を揺らした。カイさんの写真を表示させているのかもしれない。
 イクヤさんはそれを横目に見つつ、シールをもとに戻してベッドの端に腰かける。「アキちゃんはどのシールにしたの?」なんて言いながらわたしの電話をとって、ケーキとお花のシールを見ると目を細くして頭を撫でてくれたりした。
 それから、イクヤさんはユリちゃんのほうへ視線を戻して、
「カイさん大変なことになっちゃって、ユリちゃん、心配でしょう?」
「――?」
 携帯電話のディスプレイから顔を上げたユリちゃんが、きょとん、というふうに首をかしげた。イクヤさんは目をしばたかせる。
「ほらアレよ、子づくりがどうって、朝っぱらから同族の女が乗り込んできたんでしょ? ユリちゃん、そんなにカイさんのこと大好きなら、心配じゃない」
「心配、しなくちゃいけない感じ……なの?」
 ユリちゃんが不思議そうにこちらを見るから、すこし困ったけれど、うなずいた。子どもをつくりに来たというのは、つまりカイさんと結婚して、カイさんのお嫁さんになりに来たということじゃないかしら、と思う。もしも突然イクヤさんのお嫁さんがやって来たら、わたしは、あまり――素直に喜べないような、気がするから。
 でも、もしかするとそう思うわたしがおかしいだけかもしれない。
 ユリちゃんは、んー、と考え込むように腕組みして、やっぱり首をかしげている。
「でも、子づくりって……あのカイが? 部屋中ひっくり返しても料理雑誌とお料理番組のDVDしか出てこないのに? 天羅のおじさんの差し金だ、って言ってたから、じつはドッキリなんじゃない? もしくはキリヤマさんの新手のいやがらせとか。カイもすっごく怒って、文句言ってくるって言ってたし。だからもし本当だとしても、あのキレっぷりじゃそんな話、なかったことになるんじゃないかな、って――」
「それはないなァ」
 ユリちゃんが顔を上げる。
 驚いているような、どことなく不安そうな、けれどそれに気付かないふりをしているみたいなユリちゃんの表情に、イクヤさんは苦笑した。口元は皮肉っぽくみえるけれど。横顔には自嘲がまざっている気がする。
「カイさんくらい血の濃い同族の男にそんな話がきたなら、ご破算になるなんてこと、きっと無いよ。ユリちゃん」










ところで、ユリちゃんにはカイさんの血筋についてどの程度話をしてもオッケーなんだろう?←

おやっさんが従弟どの従弟どの呼んでることだし「おやっさんの近い親戚」「血統・きわめて優良」くらいの情報は安全パイだと信じているのだけれども。ユズリハ家が地祇で地祇はどうとかで、なんて話はさすがにアウトか、うん。アキちゃんもカイさんのことは「天羅のお父さんの従弟=天羅の血族」だと思ってるし。うん。


関連記事
スポンサーサイト

Comments

name
comment
ミズマ。 : URL

2013.06.26 Wed 00:06

読み終えて、心の奥底から湧き上がってくる言葉はただひとつ。

「続きは、朔ちゃんッ!!?щ(゚ロ゚щ)」



ユリちゃんはそもそもカイさんとか天羅のことをちゃんと詳しくはっきりとは知らないだろうし、教えてもらっているとしてもたぶんすぐ忘れているような気がしますねー。
「カイたちは血を飲む人たちで、私は血が美味しい人で、私が血をあげるかわりにお金もらってるってことだもんね」
という基本理念だけ知ってればいいってもんでもないんだよ、ユリちゃん……!

でも地祇がどーのとかユズリハ家がどーのとか説明しても、
「えっと、つまりカイは血統書付きのチャンピオン犬の子供だったってことだよね!」
という理解をしてくれそうなユリちゃんです。
ってか朔ちゃん! ユリちゃんが不安で泣き出しそうなので、はやく、おはやく続きを!! 続き、を!!!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.06.26 Wed 23:29

お姉さま
ユリちゃんの認識wwwwwwwwww

いや、中学生の女の子が一生懸命人間じゃない相手について理解しようと必死に自分にわかりやすくまとめてみた結果だっていうのはわかるんだけど、ユリちゃんwwwwwwwwww

カイさんは、じつはそんなに深い理由なんかなくて「てめェにゃ説明してやるだけ、ムダだな」とか思って詳細話してないだけなんじゃないかという思いが脳裏をかすめました。そんなことはなかろうけどもw 「むうー! 間違ってないでしょー!?」とかほっぺ膨らませるユリちゃんだと可愛いなあ(*´꒳`*)

comment form

Trackback

FC2Blog User

  1. Trackback
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。