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2013.07.01 Mon Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その6

じつはこの「その6」も本当は「その5」に含まれるはずだったなんてそんなまさか←










 先代天羅は痛快な男だった。
 血統主義である天祇の末子に生まれ、おなじく血統主義を掲げる大陸の血族に囲まれながら、総領として立つなり血統など知ったことかとうそぶき、頼る者があれば血に分け隔てなく庇護した。天祇の血族が天羅と地祇にわかれた時、古参の家のほとんどが血統主義を受け継ぐ地祇に流れたものの、天羅が血族としての体裁を保てたのは、先代が血統主義からあぶれた者たちをそうして残らず抱え込んだからだった。いまも天羅血族を支えている重鎮の半分以上は、先代に忠節を誓ったよその血族からの「移民」であり、天祇の時代から総領に仕える純粋な血族など数えるほどだと言ってもいい。
 始祖天羅の血族は、つまるところ、寄せ集めだ。
 それらを堅く結束させるだけの人望と、力が、先代には備わっていた。
 当代天羅がそれに劣っているわけではない。
 それが証拠に、血族の結束はいまだ崩れていないのだ。当代は上手くやっているとサハルは思う。思うが、しかし、たとえどれほどの手腕を見せたところで、総領として若すぎるという事実ばかりは変えようがない。
 当代天羅はわずかに百五十余歳――。
 先代から仕える古株には、当代よりも年長の者が当然多く残っている。彼らが当代を若輩と軽んじているとは言わないが、同族はみな、程度の差はあれ矜持が高いものだ。いまは先代への忠節と、始祖の血筋への敬意と信奉を保っている彼らが、若い総領に対していつその意思をひるがえさないとも限らない。
 だからこそカイには、総領血統のひとりとして、当代天羅の身内として、血族を支えてほしいとサハルは考えていた。カイも若いが、しかし大始祖の直系である。それが総領血統という立場をもって当代に従っているというだけでも、内外への牽制として充分な効果があるはずだ――と。
 カイの気持ちはわからなくもない。
 我儘だと断じてやった彼の言い分も、その生い立ちからすればやむをえないと、理解はできる。
 けれど、だからと言ってその血が変わるわけではないのだ。
 どれほど疎ましかろうと、そのように生まれたからにはカイは大始祖の直系であり、始祖のひとりだ。血族とともに生きる以上、その立場は否応なくついて回る。遅かれ早かれ、総領血統としての行動を迫られる時が必ず来る。それでもなお拒絶するなら血族をはぐれるより他にないが、カイはおそらく、群れを離れて孤独に生きられる男ではないだろう。
 ならば、覚悟しなければならない。
 サハルが、ジゼルが、純々血に生まれついた者たちが血を継ぎ、守るためにしてきたように。覚悟しなければならない。
 それができなければ、傷つくのも、苦しむのも、カイ自身だ。
「まあ、今回は――」
 煙草盆の縁を指先でそっと撫でつつ、サハルはため息を漏らすようにつぶやいた。
「あの子がちょっとでも己が身について考えてくれりゃあ、上々だと思うことにするさ」
「最初からそんなふうに言ってあげればよろしいのに」
 ジゼルは可憐な居住まいを崩すことなく、小さく肩を揺らして笑う。
「そうすればあの子も、あそこまで切羽詰ることはなかったでしょう。お姉様がどんどん追い詰めてしまうから、冷や冷やしましたわ」
「ならもっとはやくに止めとくれよ」
「それは出来ませんわ、私も叶うならあの子にこの話を受けてほしいと思っているのですもの。お姉様が手ぬるければ、私があの子を追い詰めていたでしょう」
「……アンタは本当に、喰えない娘だねえ」
 毒気のひとつも垣間見せず微笑むジゼルに、サハルは胡乱気なまなざしを向けて嘆息した。ジゼルは年頃の娘のように、悪戯っぽい色をその瞳に浮かべて言う。
「だって、応援したくなりますわ」
 それはサハルもおなじ気持だ。思わず強硬な姿勢に出てしまったのは、そのせいでもあると自覚している。総領の伴侶として、血族の血を管理するものとして、年長者として思うところがあったなかに、ただの女としての感情が一片もまざっていなかったかと問われれば、否やとは言い切れない。
 ただの女としても、サハルはこの縁組みが叶ってほしいと思っている。ほかの伴侶たちもそれは同じ。だからこそ、カイに拒絶されることを承知で、向こうの話を受けたのだ。
 なぜなら――。
「純々血の女(わたしたち)がだれかに操を立てるなんて、なかなか出来ることじゃありませんわ。それを彼女は百年近くがんばってきたのですもの。せめてはじめては好きな相手と――なんて、そんなささやかな願いが叶うなら、とっても素敵じゃありません?」
「それを妾(あたし)に訊くのは反則だよ、ジゼル」
 恥らうようにそう言って、照れ隠しに顔を背けるサハルに、ジゼルはまたくすくすとほがらかに肩を揺らした。










……あれ、もしかして20回くらいいくんじゃない? これ……(笑、えぬ!)


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Comments

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ミズマ。 : URL

2013.07.01 Mon 00:53

……この話、だいぶカイさんに分が悪くない?w
天羅奥様の会を相手どって、勝てるのか、カイさん?

そして私の心境としても百年越しの恋は実って欲しいかもなぁ、と思ったりしないこともないわけで、ああでもカイさんの気持ちは当然そりゃあ痛いほどわかるし、でもそれを覆すのはユリちゃんであって欲しいんだけど、ああ、もう、どうなんだろーなぁ、これ!!
朔ちゃんがとう決着持ってくるのか、はらはらしながらお待ちしております。ええ、もう、これ、どーすんの、ほんとに? カイさん、これ、受けるしかなくない? でもそしたらたぶんユリちゃん泣くけど、ユリちゃん泣かしていいはずがないよね。うん、いいはずがない!←
私だったらどーするかなー。でも、どう頑張ってもカイさんは純々血の子は作らないだろーなぁ。どれだけ押しに弱くても、やろうとした瞬間にリク姉さまの最期の姿がちらついて、できない。とゆーかたたないと思う←
本気で純々血の子供を作らせたいんなら、違うと偽って近づいてそれで……としないとアカン気がするんだよねー。そこまでダメなのか、カイさんw
将来的に自分の血、自分の子孫を残すことへの忌避感をユリちゃんに取り除いてもらった後なら生殖可能な気はしますがねー。

……と、ここまでつらつら書いたけど、不都合なことがあったら目をつむっていただいてよろしいので! 自由に、自由に書こうね、朔ちゃん! 私が言うのもなんなんだけど! 自由に書かせてもらってるのはコッチなんだけどね!

と、いうわけで続き星座待機。

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.07.03 Wed 21:53

お姉さま
天羅奥様の会とタイマン張れるひとってとりあえずリク姉さまくらいしか今のところ思いつかないです……w

>決着
お姉さまがコメ欄蹂躙してくださってて卯月ニヤニヤしてるのでここはもう勢いにまかせてネタばらししてもいいんじゃないかと思うんですけどもしかしお姉さまの一喜一憂姿を見ていたいドS心もあるので、がんばってお口にチャックします(○´艸`) お口にチャックって通じるのかな……?

>ユリちゃん泣かしていいはずがないよね
いいはずがないよ……ッ!(力強く(お前が言うな(すみません

>そこまでダメなのか、カイさん
まったくダメじゃないですかカイさんwwwwwいや笑い事じゃないけどでもだってwwwww
まあ、リク姉さまの最期の姿って卯月の想像のなかではかなり結構な感じで(´;ω;`)なので、その記憶がフラッシュバックしたらよっぽど特殊な性癖でもない限りたたないよね、しかたないよね、って……もう俺たたねえって言っちゃえばいいんだよカイさんんんんんっ(おちつけ、

番外なのに全力で好きに書かせていただいてますっ、押忍っ<(_ _*)>

いやでも本当に、お姉さまのカイユリ本編の支障になる部分(部分どころか全体かもしれない……)は、無かったことにしていただいてオッケーですので! 大丈夫なので! メインテーマは同族の結婚についてなのでカイさんはぶっちゃけ巻き込まれている状態と言っても過言ではないのです……。
 

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