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2013.07.04 Thu Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その8

ちなみに、今回のお話のタイトルの元ネタはマザーグースです。











   ***



『どおしよう、アキ……』
 事務所に戻ってすこしした頃、ユリちゃんからかかってきた電話はそんなふうにはじまって、お家に帰ってからのいきさつを話してくれるユリちゃんに、わたしは相槌を打つしかできなかった。カイさんのところに同族の女の人が来た件は、やっぱり、大変なことだったみたい。
 ユリちゃんがすごく困っているから、どうにかしてあげたいけれど――わたしにはどうすることもできなくて、ただ話を聞いてあげるしかなくて、それが歯がゆくて、つらい。
『こんな話されたって、アキ、困っちゃうね。ごめん』
「いえ……それよりも、ユリちゃんが心配です」
『大丈夫。聞いてもらったから、おちついた』
「ユリちゃん……」
『だいじょうぶ、本当に』
 あははっ、て、ユリちゃんは笑うけれど、大丈夫とは思えなかった。ユリちゃんを家の前まで送った時に、ここまででいいよって言われても、いっしょにいてあげれば良かった。わたしは何もできないけど、ユリちゃんといっしょにいれば良かった。
『それじゃっ、遅い時間に長話しちゃって、ホントごめん。でも、ありがとっ』
 ユリちゃんが話を締めくくろうとする。
 このまま電話を切ってしまうのは、すごく、いやだ。心配だし不安だった。引き留めても、なにも、解決になることは言えないけど。でも――。
「アキちゃん、アキちゃん」
 うしろから声がして、振り向けばイクヤさんがわたしの携帯電話を指さした。
「代わってくれる?」
 うなずいて電話を差し出すと、イクヤさんはひょいと受け取って輪郭に沿わせる。ユリちゃんが目の前にいるわけではないけれど、柔らかい表情で話しだした。
「もしもーし、イクヤさんですけど。いきなり代わってごめんねー、大丈夫? うん、そう、俺も気になってますよ。ユリちゃんはうちの子のお友達だし、うん、うん――大丈夫?」
 ユリちゃんは、大丈夫です、とか、平気です、って返事をしているみたいだった。
「ユリちゃん、あのね、しんどくなっちゃったらうちにおいでね。今からもっかい来てもいいよ、泊りにおいでよ、うちの子も喜ぶし。うん、大丈夫? 連絡してくれれば迎えに行ってあげるよ、いつでも。俺、今日はずっと起きてるから夜中でも――ちがうちがう、そーじゃなくて、俺たち毎日寝るわけじゃないの。本当。カイさんはそれ寝過ぎだから。イクヤさん今日はたまたま寝ない日なんです。ホントよー? うん、うん。だから遠慮しないでおいでね、いつでもいいから。我慢しちゃダメよ。うん。――それじゃあ」
 通話が切れると、イクヤさんはこっちを見て微笑んだ。
「これなら、アキちゃんもちょっと安心?」
 たたんで返された携帯電話を受けとりながら、何度もうなずく。
 イクヤさんは事務所のぼろのソファに座っているわたしのとなりに腰をおろし、頭を撫でてくれてから、すこし遠くを見るようにため息を吐いた。
「血筋が良ければ良かったで、面倒くせェもんだけど……カイさんの性格じゃ、余計かなあ」
「カイさんが結婚すると、ユリちゃんは、どうなるんですか?」
 イクヤさんは視線を上向けて首をかしげる。
「どうしてもって言うなら、今までどおり、いっしょに暮せなくはないと思うよ。ユリちゃんはまだ調理中なんでしょ。でも、年頃の女の子としては、それも複雑な心境じゃないかな」
「そうですか?」
「たとえば、アキちゃんは俺がお嫁さんをもらって、その人もここに住みはじめたら、どう? ずっといっしょにいるのよ。俺ととっても仲良くして」
「……、むずかしいです」
 そんな状況はうまく想像がつかないけれど、イクヤさんが、外で女のひとと仲良くしているのを見たことなら何度もある。あんなふうが、ずっと、お家でも続くのかと思えば、いやな気持ちになった。結婚はおめでたいことだから、お祝いしなくちゃいけないはずだけれど。もやもやして、「むずかしい」。
「俺は結婚なんかしないから、つか出来ねェし、そーいう心配はないけどねえ」
 イクヤさんはわたしの顔をのぞき込んで、ぐりぐり、と眉間を揉むように押してくる。
「もしそうなったら、こんなに眉間しわ寄っちゃってるところに、アキちゃんにはまだ思いつかないような気遣いとか遠慮とかも入ってくるわけですよ。なにせ子どもつくるのが目的だから。そんな状態じゃ、ちょっと居づらいね」
「思いつかない、というのは?」
「もうちょっと大きくなればわかるから、ノーコメント」
 子ども扱いにムッとする。腹立たしいから睨みつけてみたけれど、イクヤさんはおかしそうに笑って、わたしなんかこわくないみたいだった。頭を撫でられると心地よくて力が抜けてしまうから、しかたないけれど。
「まあ、ユリちゃんは大丈夫よ。カイさん大人だから。なんとかしてくれるって」
「はい」
 イクヤさんの言うとおり、わたしもたしかにそう思う。カイさんは大人だから、大丈夫。けれど、でも、ユリちゃんのことを思うとやっぱり心配だった。どうしよう――って、電話の向こうから聞こえた声は、すごく頼りなかったから。
 あんなふうなユリちゃんを、ひとりにしないでほしいのに。
 わたしがイクヤさんといればホッとするみたいに、ユリちゃんだって、カイさんがそばにいるだけで、きっと、すごく、安心できるはずなのに。
 そばにいてくれるだけで、それだけでいいのに。










ところでうちのフェアリーは何やってるんだろうって思ったけどそういえばちょっとまえに完璧プライベートの悩みで長らく使い物にならなかったあげく勤務時間中に女の子のとこに走っていちゃうわだったから、きっとキリヤマさんに「挽回なさい」と仕事ギュウギュウに詰められてこき使われてるんだと思う。


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Comments

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ミズマ。 : URL

2013.07.05 Fri 00:31

タイトルのスパイスってのは、このユリちゃんのHP赤点滅ですけどどうするのー!?щ(゚ロ゚щ)という不安感というか焦燥感というか、そういうことですか、スパイス。違うか。

カイさんがいま安定のイクヤさんェ化しているので、本家のイクヤさんが、あれ、なんだか、頼もしく、見える、ぞ……アルレェ?(゜-゜)

>カイさん大人だから。なんとかしてくれるって
なんとかなるんだよね、朔ちゃん!? 大丈夫だよね? まさかの死別エンドとかの急展開に陥ったら、さすがにちょっと困るというか、別にif話として書けばいいだけのことなんですけどね、でもちゃんとユリちゃん安心して眠れるようになるよねぇッ!?

>カイさんはそれ寝過ぎだから
これ、どこかで朔ちゃんに突っ込まれたことあった気がしたなぁw
カイユリは同衾がデフォだから、カイさん寝過ぎなんだよなぁ。
……あ、それ以外の設定をつけるのであれば、オンブルちゃんから生命力とられちゃってて云々とか。80年ぐらい前の話ですけどw

大人なカイさんがどう決着付けるのか星座待機、だけどそろそろフランチェスカ嬢の再登場があっても良いころあいでは、ないか、ね?

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.07.05 Fri 22:08

お姉さま
(卯月が「スパイス」で真っ先に思い浮かべたのがカイさんの体臭だなんて言えない……!←)

>本家のイクヤさんが、あれ、なんだか、頼もしく、見える、ぞ……
錯覚です!(言い切った!
アキちゃんを安心させたいがためにユリちゃんに退路を提示して見ているだけなので、じつはそんなに頼もしくないイクヤさん! 逃げ道を作らせたら右に出る者のいない系ヒーロー!ヾ(゚∀゚ゞ)
なんて卯月が言ってしまうからイクヤさんの認識がますます「イクヤさんェ」になっちゃうのかなあw

>まさかの死別エンド
急wwwww展wwwww開wwwww お姉さまおちついてwwwww
いや、お姉さまがここまで急展開を危惧するくらい傍若無人なマネをしている卯月が悪いのですけども! とりあえず死別エンドはさすがにナイので! それだけはご安心ください!

>カイさんは寝すぎ
そうかっ、カイさんはオンブルちゃんにエナジードレインされてるから、回復しようとして眠くなっちゃうのか! なるほど!(ちょー納得
ちなみに卯月は「80年ぐらい前の話」アイドリング星座待機中ですキリッ(自重して(はい

>フランチェスカ嬢の再登場
(あんなに派手に登場したのに再登場はもうちょっと先になる、とか……言えない……!←)

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