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2013.07.19 Fri Novluno Child 『お砂糖とスパイス、それから恋のひとかけ』 その14

ひきつづき、カイさんとユリちゃんのターン。










「ずっとじゃなくていいんだ。そんなのはカイに迷惑だし、無理だってわかってる。だけど……せめて、あともうちょっとだけ、いっしょにいたい。高校生になればひとり暮らしができるから、それまで。邪魔にならないようにするから」
 ひとりにしないで――。
 そう言いながらユリは服の裾を強く握りしめていた。
 邪魔にならないようにする、迷惑だから、無理だとわかっている。だから手を伸ばさない。そうするのはわがままだとでも思っているのか。あるいは、意地か。
「俺といたって、辛くなるだけかも知ンねェぞ」
 天羅はユリに同情的だ。保護しようとしているのは真実だ。
 その反面、いざとなれば利用される立場に置かれていることも、今回でよくわかった。血族を守るという点において、総領たちに容赦はない。
「だいじょうぶっ」
 ユリはカイの言葉を否定するように、首を振った。
「カイのお嫁さんとも、仲良くできるし。できるように努力するし。外国にいくなら英語もがんばるし。邪魔しないし、」
「そォじゃねェ。そンなことじゃなくて」
 姉を死なせてしまったような、弟が抜け出せなかったような、同族の血にある昏くぐちゃぐちゃした深みを、ユリは知らない。
 知らないまま、いまなら、はまり込む前に離れられる。
「もっと怖くておっかねェことが、あンだよ。同族(おれら)には」
「だいじょおぶだよっ」
 癇癪げにユリが声を張った。そうしなければ震えて声にならないのだろう。力み過ぎて手の甲は真っ白になっている、右手にはあざが浮いていた。
 なにが「大丈夫」だ。痛むだろうに。
「おっかないってどうなるのか、わかんないけどっ、でも、こわくないっ」
 顔を上げたユリの目のふちから、いっぱいに溜まった涙が溢れてこぼれた。
 その拍子にしゃくり上げると、あとはもう堰を切ったように呼吸を乱しながら、ユリは懸命に声を絞り出す。意地の強い顔をして。けれど縋るような目で。
「カイがいるなら、なんにも、こわくない、でしょ――?」
 唇を噛んで泣き声は堪えても、流れ出した涙を止めようもなく、ぼろぼろと頬を濡らす。
 さびしがりの子どもだ。
 ユリは辛抱強く、利口で、意地っ張りで、さびしがりの、ただの子どもだ。
 守ってやらなければならない。
 こんな子どもが、見なくてもいいものを見、知らなくてもいいことを知り、都合よく利用されて傷つくことのないように。優しい場所で、安穏と生きられるように。守ってやらなければならない。この手のなかにいれば、いずれ傷つくことになる。その前に――。
 わかっていても、結局、あの時すぐにも出て行こうとした足は、サハルの易い脅しで止まった。いけすかないはぐれ者の挑発にみすみす乗りもした。一時の縁で預かった子どもがそばにいることを、いつのまにか当然のように思っていた。
 だからまた、今も、はなそうと決めた手を性懲りもなく伸ばしている。
「泣くな、ユリ」
 すこしでも涙を留めようと必死に見開いていた目が、嗚咽を噛みころす口元が、強張った頬が、ユリの顔が、くしゃりと歪んだ。皺寄った服の裾をはなして華奢な両手が伸びてくる。
 カイは背を屈め、腕を回し、がむしゃらにしがみつこうとするユリを抱き留めた。元から同族よりも体温の高い身体は、湯上りでいっそう温かい。つま先立ちになっているユリを、床に膝をついて楽にしてやると、その分だけ細腕にこもる力が強くなった。カイの耳元でユリは泣きじゃくる。
「カイ、カイ、ごめっ……ん、ごめん……っ」
「何がごめんだよ。謝るこたァねェだろ」
「だっ、て……カイが、困る、の、わかって……けど――」
「てめェに手が焼けンないつものこったろォが、今さら。どォってことねェ」
「やっぱり、わたし、ひとり……でも、だいじょうぶ、」
「びーびー泣きながら言われても説得力ねェってンだよ。いーから、息吸え。吐いてばっかじゃねェか。しぬぞ」
「す、す、吸ってる。吸って、る」
「鼻もかめ、ほら」
 手を伸ばしてちぎりとったキッチンペーパーをあてがえば、ユリは遠慮も恥じらいもなくずびりと鼻をかんで息を継ぐ。
 そうしてまたすぐにしがみつくユリの頭を、カイは二度三度、軽く撫でてやった。
「悪かったな……大丈夫だから、心配すンな」
「……うん」
 肩に埋めている顔をこすりつけるようにユリがうなずく。
「カイ、あのね――」
「なんだ」
「きのうの、ケーキ……食べたい。お腹すいた」
「しょうがねェなァ」
 食事を要求しながら離れる気のないユリに抱きしめられ、ひと際近づく体温に、カイは目を細くし、そのまま瞼を閉じた。遮られた視界の闇のなかで、アムリタの血の甘い香りが重く、濃く、輪郭を持つ。ユリの存在すべてが腕のなかにあった。この充足感と安堵を。
 いまさら、手放せるはずもない。



 泣くだけ泣いてしまえば、あとはいつものユリだった。
 夕食をぺろりとたいらげた上にケーキもまぐまぐと完食し、食事の片付けと入浴をすませてリビングに戻れば案の定、ソファのうえで布団にくるまり、ホラー映画の続きを観ていた。そこからはお定まりの流れで、結局今夜もエンドテロップを目にすることなく、ユリは自分のベッドから連れてきた大きな灰色オオカミのぬいぐるみを抱え、細い寝息を立てている。
 その寝顔をしばらく眺め、カイは布団から抜け出した。
 空調の効いた室内を足音も立てず横切り、そっと開けた大窓の隙間からベランダに出る。むっとする熱気が肌にまとわりつくのを感じながら、手にした携帯端末で呼び出したアドレスへ電話をかけた。
『決まりましたか』
 出るなり本題を急かす多忙な悪友に、カイは苦笑する。
「バァさんに伝えとけ。――話を受ける」










15回更新で完結は、さすがにムリ_(´ω`_ )_


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Comments

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ポール・ブリッツ : URL

Edit  2013.07.21 Sun 18:07

ユリちゃんには、カイとフランチェスカが結ばれた後でも「姑」的ポジションに居座るくらいのタフさを求めたいと思う……。

ミズマ。 : URL

2013.07.22 Mon 00:28

ユリちゃんは、ちょっと時間たって落ち着いて、このままちゃんとカイさんとフランチェスカ嬢がそーゆう仲になったのであればポールさんが言う感じのポジションになりそうなんですけどねー。姑というよりも二人の子供……じゃないな、妹なポジに。
その後ユリちゃんに恋人が、とかいう段階で、カイさんが焦れば大変よろしい。


ともあれ、ですよ。


>「カイがいるなら、なんにも、こわくない、でしょ――?」
ユーーーーーーーーーリーーーーーーーーーーーーちゃあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああんんんんんんんんんんん!!!!(*゚ノO゚)<オオオオォォォォォォォーーーーーイ!
マジヒロイン、超、マジヒロイン大天使なんですけどォッ!?
なにこの子、超天使! ってかカイ、てめぇどォしてここでオソわねェんだ、あァ? たまァ、ついてんじゃねェのかよ、てめェ! ンで、覚悟のしどころがちげえよ! そっちかよ、てめェ! 馬鹿か! アホか! ってかこの期に及んで保留も出来ねェし逃げるのもアウトだろうし、ってかさぁ、これ、私本編これ受けて二人をどうやってラブラブにさせればいいと、思う……?←聞くな。
やー、まあ、一応ありますけどねー、計画というかプランというか。でもなー、それをちゃんと使えるかどーかがなー。今後の話の流れにかかってるというか、天羅側がそれを了承してくれるのか否か、というか。

彼らって、例え最上のアムリタであるユリちゃんの血より、カイさんの子種の方が大事だよね?という確認をしてみたりー。ま、それでどうにかなる事態でもないとは認識してますけど、一応の確認ね。

ああ、全部ネタばらして了承とりたいけど、ネタバレすると書く気がなくなるの!
だから言いたいけど、言えないというこの苦悩!!←だったらはよ書け。


ともあれ、これで結局どうなるのか、はたまた事態はまだ二転三転するのか正座待機☆

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.07.22 Mon 23:41

ポール・ブリッツさま
「姑」と聞くとどうしても「お嫁さんにいけずする」っていう先入観があって……ユリちゃんがポジとるなら、お姉さまのおっしゃるみたいに「妹」なイメージですねえ。卯月。
ユリちゃんは、たしかにタフなイメージ。背筋伸ばして、前見て立ってる印象ですねえ。


お姉さま
ユリちゃんはマジヒロイン大天使ーっ、超天使ーっ!!ヾ(´∀`*)ノ

お姉さま、巻き舌www巻き舌wwwおちついてくださいwwwww や、まあ、原因作ってるのはほかならぬこの卯月なんですけれどもすみません、本当、すみませんっっっ(平身低頭

>本編これ受けて二人をどうやってラブラブにさせればいいと、思う……?←聞くな。
……、……、……orz(平身低頭

>ユリちゃんの血より、カイさんの子種の方が大事だよね?
そ、そのとおりです、ね……アムリタが人間であることを考えて、どんなに美味しく仕上げたとしても、数年~数十年、長くても三十年程度で老化にともない鮮度とか質とかがやむおえず落ちてくると思ういますし。たとえ百年に一度の逸材だとしても、同族の純々血の寿命五百年なら、生涯に五人はすごいアムリタと出会うってことになるので。もろもろ踏まえると、総領血統の子種のほうに、天秤が傾くどころか皿が落ちます。

けども、おやっさんがユリちゃんに同情的なのは事実だし、カイさんの性格も知ってるから、イクヤさんに対するほどガッチガチに制限かけた対応をしよう……とは、思わない……と、いいなあ、って、思うのですがまだおやっさんの総領としての顔を真正面から見たことがないので、どの程度鉄血なのか、卯月にも曖昧にしかわからない状態で、す(汗

でもでも、本当にそんなに厳しくはしないと思うのですよ! 相手カイさんだし! ユリちゃんだし!><

>ネタばらし
ダメ、絶対!(((( ;゚Д゚)))

続きは、続きは、まだ……ない……←

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