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2013.08.08 Thu Novluno Child if番外『優しい狼さんの絵』

と、いうわけでどうしても今日中に更新したかったんだけどupされる頃には日付かわってるかな! 日付変更まであと1分!

ちなみに、以前書いた『カイさんとユリちゃんが恋愛EDしなかった世界』のお話になるので、なんぞや? という方は、まずこちらこちらに目を通していただければと、思います(*`・ω・´)









「――ランちゃん、わるくないもん」
 幼稚園の送迎バスから降りてきたのは、泣きはらした目のむくれっ面のランと、その手を引くコウタローと、困り顔の若い保育士だった。保育士がかくかくしかじかと言う事には、このデコっぱちのチビガキは園児数人を向こうに回し、昼間、大立ち回りをやらかしたらしい。
 保育士に謝罪と礼をし、カイはコウタローからランの右手を引き取った。
 コウタローは同族の子どもである。カネダ先生とヴァシリーサの孫にあたり、ランとは幼馴染だ。コウタローの家はずっと手前にあるはずだが、ランが手を離さず、結局ここまで来てしまったのだと。おばあちゃんがしんぱいするからかえります、と言って保育士とともに送迎バスに乗り込むコウタローを見送り、カイはランを連れて家に引きかえした。
 ――さて。
「どォしてケンカなんざやらかしたンだ?」
 手を握っているだけでは満足できなかったのか、玄関に入る頃には腿にしがみついていたランをどうにかして引っぺがし、手と顔を洗わせ、うがいをさせ、園のチュニックから部屋着に着替えさせてリビングに連れてきたところで、カイは大きく息を吐いた。リビングのソファは何度か買い換えたが、相変わらず大きさはベッドほどある。ちいさな子どもをあぐらに乗せて楽に座るくらいは余裕で出来た。
 ランは真っ赤な頬をむうっと膨らませたまま、やわらかな眉間をしわ寄せて言う。
「わるくないんだもん。ランちゃん、わるくない」
「だから、なンでってことだよ。良いとか悪いとかじゃねェ」
「わるくないもん」
 カイはため息を吐いた。理論的な会話がむずかしいのは承知のうえだが、なるべく当人の話を聞いてやりたい。保育士が言うには、ランが描いていた絵をほかの園児がふざけて破ってしまったのが原因だということだったが――。
 カイは手を伸ばし、ソファの隅に放り出していた通園バッグをたぐり寄せた。
 バッグから突き出だしている画用紙の筒を抜き取り、腹回りにぴったり抱きついているランの頭上で広げると、たしかに皺寄った画用紙は真っ二つになっていた。セロハンテープで繋ぎ合わせたのは、半分がランで、もう半分はコウタローだろうか。
 画用紙を眺めつつ、カイは腹にくっついているランの頭を肘でつついた。
「おい、これァ何だ? 怪獣か?」
「おおかみっ」
 ぎゅう、っとカイのコックコートの両脇をちいさな手で力いっぱい握りしめ、ぐっと引っ張りながら、ランは機嫌の悪さそのままの調子で答える。
「カイのっ、おおかみっ」
「……俺かよ」
 ユリの子どももその子どももそのまた子どもも、皆、総じてモフモフが大好きだ。
 より正確にはイヌ科のモフモフ、もっと詳細には狼のモフモフ、つまり狼に変化したカイのモフモフが大好きだった。原因は、代々ユリの血筋の子守りを仰せつかっているカイがたびたび狼の形態をとってあやしたりするからなのだが、はたして俺は赤だ紫だって毛色になったことがあっただろうか――子どもらしい斬新な色使いに、カイは軽くのけ反った。
「ダイくんが、」
 腹のうえに顔を伏せたまま喋りだしたランを、カイは画用紙のはしから見下ろす。
「ん?」
「ダイくんが、おおかみすきなの、へんっていった」
「変だって?」
 ランはコックコートに額をこすりつけるようにうなずいた。
 要するに、好きな動物の絵を描く時間に嬉々として狼の絵を描いていたランに、となりの園児がいちゃもんをつけてきたのが事の発端らしい。それが声の大きな男の子で、あれよあれよとほかの園児まで集まって、四方八方から騒ぎ立てられたランはついに勘弁ならず、件のダイくんを引っぱたき、大乱闘に至る――という流れはカイの想像に難くなかった。
 事情を話しているうちに興奮がぶり返したのだろう、ランは鼻を鳴らしてしゃくりあげる。腹のあたりがじんわりとあたたかくなり、泣いているのは見なくてもわかった。
「おおかみは、わるものだから、やっつけるって、ダイくんがいう」
「まあ、本に出てくるなァ大体ワルい奴だわな」
「ランちゃんの、おおかみは、やさしいよって、いうけど、うそだって。へんだって。ダイくんが、やっつけるって。だから、」
「だから?」
「ランちゃんが、ダイくん、やっつけた」
「お、おう……」
 思いがけず武闘派に育ちつつある子どもの将来に不安がよぎる。ランがまったく無傷なのはコウタローが止めに入ったからだと思っていたが、快勝してきただけかもしれない。
「ランちゃん、わるくないもん」
 ずびびっと洟を啜りあげるランの声は意地になっていた。
 幼稚園でもそうして、何度もくりかえし言っていたのだろう。
「ランちゃんの、おおかみは、やさしいんだもん」
 子どもらしい鮮やかな色の絵と、ちいさな頭を見比べて、カイはやれやれとため息を落とした。
 画用紙をテーブルに置き、背もたれに深く身体を預けながらランを抱きなおす。ランは絶対に顔を上げない。その意地っ張りに懐かしさを感じつつ、カイはやわらかい黒髪が覆う頭を撫でてやる。
「そォだな、悪かねェよ」
「うん」
「でもケンカはダメだ」
「う、」
「やたらめったにひとをド突くのァいけねェことだし、てめェは女だぞ。顔にケガでも出来たらどォする。――ケンカはダメだ」
「……うん」
 もうしない、と頷くランの頭に手をあてたまま、カイはもう片手でふたたび画用紙を取り上げた。しわしわの、真っ二つで、セロハンテープでくっつけられた絵を掲げ持って見やる。
「大体、だれがなンつったって、ほっときゃイイじゃねェか」
「う?」
「どこのどいつか知らねェが、そいつが言うから、俺が悪者になるのか?」
 涙をためて鼻水を垂らす顔を上げ、不思議そうにまじまじと見つめてくるランに、カイは不敵げに笑ってみせた。
「てめェのオオカミは優しいンだろ? ちがうか、チビガキ?」
「――そおだよっ!」
 ぱっと、ランは瞼のふちの涙をまばたき一つで掃き散らす。背筋をしゃんと伸ばし、頬を紅潮させながら、両手を高く振り上げた。 鼻水は垂れたまま満面の笑顔。
「ランちゃんのおおかみはっ、やさしいよっ」
「なら、それでイイじゃねェか」
 甲高い奇声を上げてしがみつくランを抱き留め、カイは苦笑する。子どもなんてお手軽だ。お手軽なくせに、一人前に譲れないものを持っていて、それで泣いたり怒ったり、笑ったり喜んだりするのだから世話が焼ける。
 おかげさまで、時間はあっという間に過ぎ、独り思い出に浸ることもままならない。
「カイ、カイ、もふもふして! もふもふして!」
「あァ? 面倒くせェな」
「もふもふー! もふもふー!」
「あーあー、わかった、騒ぐな。うるせェンだよ――」
 どうせコックコートはベタベタだ。着替えるなら、もののついでだ。
 ふへへ、と顔を上げて笑うランの鼻をつまんでやりながら、カイはほだされた自分をそう言いくるめ、こらえきれず笑い返した。










我が君のお宅の姫が描いてくださった『優しい狼さんの絵』をどうしても、どうしてもカイさんに届けたかった! その一念! なのに、シワシワびりびりにしちゃってごめんね、姫(´・ω・`);;;

ランちゃんは「十八番目の子ども」のお話の時よりさらに幼女化してて、幼稚園児。このくらいの子どもがどれくらいしゃべれるのかよくわかんないよ……!(涙目)

ユリちゃんの血筋はみんな、猫より犬派、犬より狼派、だと思うのであります。



オマケ↓










「カイ! 見て見て! ちょっと見て!」
「あー?」
 騒がしい声とともにソファに寝そべるカイのうえに落ちてきたのはランだった。
 着るものが幼稚園の制服から駅近の小洒落た雑貨屋で見繕った娘らしい部屋着に代わっても、やることは大差ない――と、鬱陶しげに頭をもたげかけたカイは、すぐにげんなりと目を細め自らの思考を訂正する。やることの差違は大いにあった。
「ねえねえ、見―てー見―てー」
 そう言いながら閉じたノートを突き出し、男の腹のうえで腰を振るような真似はまず間違いなく幼稚園だの小学校だのに通っていた時には絶対にやっていなかったし、していたならこの歳になる前に全力で健全化を図っている。
 カイは酷い頭痛をもよおしながら、眼前に突きつけられたノートを片手で引き下げ、半眼でランを見据えた。
「おい、やめろ」
 低く唸る声は同族相手には効果抜群だが、この小娘とくれば怯えるどころか目を輝かせ。
「――感じた!?」
「ガキのまたぐらに何がどォ感じンだっつーンだ、ざけンな」
「ちぇー」
「……あきらめたよォな面で何さりげなく位置ずらしてンだよ……?」
「こうなったらカイの野生の本能を直接刺激、」
「ふ、ざ、け、ン、なっ、降りろ!」
 ランを転がすようにカイは身体を起こした。
 ベッド大のソファにランはおおげさに身を投げ出し、ノートを胸に抱えて上目使いの視線をカイにくれる。どういう仕掛けか瞳はうるんで頬は花のように色づいていた。
「カイ、乱暴……やさしくしてほしいのに……」
「黙れ痴女家に帰すぞ」
「えーっ、パパとママが出張中は心配だから泊まりに来いって言ったのカイでしょー?」
「チッ」
 ランの父母は相変わらず忙しい技術者をやっていた。いかにハレンチ極まる小娘でも、外に出せば身持ちの堅い美少女で通っている(らしい。カイにはよくわからない)ランを一人留守番させておくのはたしかに心配だった。コウタローあたりに面倒を押しつけても良かったが、修学旅行でさえ腹痛で欠席するあのおばあちゃん子が一晩でも自宅を離れるとは思えないし、同族しかいないコウタローの家にランを預けるのも気が引けた。
 ランはアムリタでもない、ただの人間の子どもだが――何にせよ、年頃の娘には変わりない。脅しが脅しにもならず苦虫を噛み潰すカイを見て、ランは寝そべったまま「ふへへ」と笑った。
「――で、なンだよ」
 カイは眉間の皺を深くしながらランに問う。
「何を見るンだって?」
「これこれっ!」
 ランは胸に抱いたノートを今一度、カイに向かって突きつけた。
 なんの変哲もないノートである。
「ここっ、見て! これ!」
 怪訝な顔をするカイに、ランはノートの一点を指さしてみせる。
 そこをよく見れば、ごちゃごちゃとシールの貼りたくられた表紙の端に、らくがきがされていた。ネーム用の油性ペンで描かれているのはもふもふした三角耳の生き物だ。
「上手に描けたよっ、カイにそっくり!」
 言うなりノートの表紙を自分に向けて抱き寄せ、ランは右に左にごろごろと転がった。ランの機嫌の良さに反してカイはげっそりする。こいつは今年でいくつだったか。法律上は結婚だって出来る歳のはずだ。
「ガキみてェなことすンなつってンだろ、学校のノートに」
「だからだよ! ノート提出した時に私のってすぐにわかるって! 先生が言ってたし」
「笑われてンぞ」
「いいんだもーん。カイとずっと一緒にいたいもーん」
 ねー? と、自分のらくがきに同意を求めるようにしゃべりかけるランに、カイは肩を落として嘆息する。
「どォでもいいが、ケンカすンなよ。もう」
「? ケンカ?」
 首をかしげるランに、カイは立ちあがりながらひらひらと手を振った。
「なンでもねェよ。――飯にすンぞ」
「ハンバーグ!」
「デザートは桃のアイス」
「やったー!」


 







ユリちゃんもやってたオオカミグッズ収集癖に加えて、自分の持ち物にはなんでもオオカミマークを描くのがランちゃん。オオカミだけはめちゃくちゃ上手い。写実的なのからマスコット的なのまでどんなのでも描ける。他のものの絵は全部怪獣。

ランちゃんはいつだって全力。


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Comments

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ポール・ブリッツ : URL

Edit  2013.08.08 Thu 21:03

ユリちゃんとなら悲恋の予感しかしないけど、ランちゃんなら気がついたら結婚していて子供が三人いました、なんてことになっていそうであります(笑) シリアスふたりよりも、どっちかが能天気のほうがうまく行く説(笑)

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.08.08 Thu 23:45

ポール・ブリッツさま
気付いたら子ども三人wwwwwwwwwwww
想像してみたら違和感なくて三人の子どもに囲まれたカイさんがハッと気づいて「俺何やって……!?」みたくなってるのをランちゃんがドアの陰から見てて「クックック……計画通り!」みたいな(笑) どっちかが迷いなく直進していくタイプだと展開が楽そうwどっちかが能天気のほうがうまく行く説は真理(笑)

我が君 : URL

2013.08.09 Fri 13:35

我が子の描いた絵を、こんな綺麗な形にしてくれてありがとう!
現実は、、、ん、んん?ってな感じの絵で母も困るわけで(;^_^A
これをきっかけに、狼好きに育ててみるかな!

: URL

Edit  2013.08.10 Sat 13:40

ランちゃん男前かわいい……!!!好きなひと守ってる……!!
園児のランちゃんがかわいすぎてニヤニヤしました。カイさんは!よく!あれで!ぐらつかないですね!!さすがやさしい狼!!
はしばしから感じる愛情とあたたかい対応にカイさん紳士だなあ、と(`v`*)
カイさんもふもふするランちゃんを壁から見守りたいです!

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.08.11 Sun 22:10

我が君
オオカミかっこいいからねー!ヾ(´∀`*)ノ
N○KとかB○Cとかの動物モノ番組を見せて育てるといいかもしれない(笑)
ちなみに送ってくれた絵は卯月のスマホにも保存されているから! 記念にとってあるから!w


歌さま
ランちゃんは考えるより突撃していく系美少女なので! 園児ですけども! 大きくなると痴女ですけども!(笑)
せっかくのif世界なので、大きくなったランちゃんに猛烈アタックされ続けたカイさんがそのうちグラグラしてくれると大変うれしいです。でもポールさまが言ってたみたく「気づいたら子ども三人」もいいなあという思いもありw 卯月もカイさんをもふもふするランちゃんを見守り隊ですー! 可能ならいっしょにもふもふしたい……!щ(゚▽゚щ)

ミズマ。 : URL

2013.08.11 Sun 22:12

そうなのよ……悲劇の予感しかしないユリちゃんとどうやってくっつけるかっていう、ね……(゜-゜)
やー、でもさ! あと三年後ですから、本編というか、くっつくのは! だから、それまでにユリちゃん成長しますし! だから大丈夫。心配しなくても、あそこはラブラブなエンドですから、大丈夫なのであります。(と、いう自己暗示……)



でも、ランちゃん超天使……ッ!!!ヘ( ̄▽ ̄*)ノ・ ・.♪ヒャッホーイ♪.・ ・ヾ(* ̄▽ ̄)ノ
かわいいったらない! かわいいったらないのですよ、ランちゃん!!!
……それをいなすカイさんは、なんというか、大天使クラスなのか、と。考えてしまうわけで。あ、煩悩とか性欲的な意味でね。仏か菩薩か、なんなんだてめェ、子孫残す気ィあンのか、と。←

でも、そうかー、片方能天気な方が上手くいくか、そーかー。( ..)φメモメモ

卯月 朔 : URL いらっしゃいませ!

Edit  2013.08.11 Sun 22:32

お姉さま
カイユリはハッピーな恋愛EDじゃないと全卯月が発狂します……いや、悲恋も好きですけど、大好きですけど!(複雑な心境)

卯月も……本編、どうしようかなあ……もう始まってるっちゃ始まってるけど、当初の計画より早くスタートしちゃったから(初期計画ではアキちゃんが高校に入ってからの予定だった)、前倒しになった分あっちこっちがわやわやで……書けるのかなあ?(高まる不安

>煩悩とか性欲的な意味で
カイさんが悟りの境地wwwwwwwwwwwwwwwww
ユリちゃん一族の子守りし続けたせいで、それで充足しちゃって、煩悩とか性欲とかが芽吹く余地いよいよなくなっちゃったのではないかとwwwww欲求満足してるカイさんと欲求不満のランちゃんの闘いですねwwwww
ランちゃんが天使なのは確実にユリちゃんの血(笑)

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